7 | ナノ
槙島聖護と過ごしてもう一年が経った。
彼の身長はきっと約180pだ。これは自分の身長から計算した推測。
私は日本人女性の平均身長くらいだとは思う。
彼は日本人男性にしては背が高すぎて私と彼は凸凹のように距離が遠い。
彼はリーチもあるからちょっかいをだしても絶対に届かないし、逆に彼が私に手を出そうとすると敵わない。
私は毎日とても悔しい思いをしている。

ある時、私はパソコンを広げインターネットをしていた。
それは自分の大好きなブランドの通販サイト。私も一応は女の子だしお洒落はしたいお年頃。
今年の春新作のファッションはとても可愛くてパソコンの画面を見つめる目は輝いた。
でも物を手に入れるには彼に頼まなくてはいけない。私は此処に連れてこられた一応は囚われの身。
つまり主導権は今隣に座って悠々と本を読んでいる彼が握っているのだ。
私は「フッ…」っと鼻で笑ってパソコンを静かに閉じた。彼に頼めばいいのだろうがそれができたら苦労はしない。
もし、これが欲しいと頼むとすると彼は「それを買って着飾って綺麗になった自分に自己満足を浸るのかい?」なんて罵られながらも買ってくれる姿を予想できてとても腹が立たしくなり諦めたのだ。
私はがっくり肩を落としながら自室に戻ることにした。そんな私の後ろ姿を彼が見ていたなんて事も知らずに。

翌朝、リビングを訪れるとそこにはドレスが立て掛けてあった。
ローズピンクのシルクの布に蝶や薔薇のアンティーク調な模様をあしらい、背中には大きなレースのリボン、可愛らしく少し大人びたデザインのドレスだった。
私はなんだこれは?と立ち尽くしていると槙島がいつまにか後ろにいて箱を抱えていた。

「おはよう。調度いいところに来たね。ちょっと足を貸してくれないかな?」

そう言うと私の目の前でしゃがみ込みと私の左足に触れた。彼の冷たい手の温度にヒヤリとしてビクッと身体が動いて驚く。

「ドレスのサイズは予想はできたけど、ヒールだけは履いてみないとわからないからね。どうだい?履きにくくはないかな?」

彼に履かされた薔薇のコサージュが飾られたハイヒールを両足に備えると周りの景色が少し高く見える。
いつもは底が低いパンプスばかり履いていたからハイヒールなんて慣れなくてふらついてしまい、彼を支えにしがみついてしまった。
視線を上に向けるといつもより彼の顔が近くなった。

「この距離ならキスが簡単にできそうだ」

彼はいきなり私の手を取り、まるで王子様のように手の甲にキスをした。
流石に犯罪者と言えどそれなりの美貌を持つ男だ。普通に戸惑ってしまうのは当たり前。
きっと顔を赤くして狼狽えているこんな私を彼は心底楽しそうに思っている事だろう。
簡単に手を伸ばしても届かない。何かを必要としないと近付けない彼の背丈。別に彼に近づきたいとは思ってない。この付かず離れずの慎重差が私達には調度いいのかもしれない。

「それにしてもどうしてドレスなの?」
「あぁ、泉宮寺さんが明日の夜に帝都ネットワーク建設関係のパーティを行うそうでね。君も是非参加してもらたいそうだ」
「は…?」
「僕は表沙汰には出れない身だからね。君一人で参加するといい。なんせあの泉宮寺さんのお誘いだ。絶対行くように、ね?」

何が“ね?”って最後の文字を強調した言い方とこの憎たらしい天使のような無垢な笑顔を私に向けた、向けやがった。当然だろう私の反応は

「はぁぁぁぁーー!?」

今までにない驚きの声を上げたのだった。
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