6 | ナノ
※暴力表現あります


隔離された部屋。光の届かない部屋。冷たい部屋。その全てが当てはまる場所に私は閉じ込められている。私を閉じ込めた相手は、とても好きだった人。





鉄のように固いドアが錆びた金属音を立てながら開く。


「ただいま、なまえ」
「・・・」


槙島さんはそう言ってわたしの頬に触れようとする。前はその優しい大きな手が大好きだった。でも今は違う。大嫌い。
私は触れないでというように槙島さんの手を振り払う。


「おや、反抗的だ」
「お願いです。鎖だけでも外して下さい」
「・・・」


部屋の中を動けるように、だけど外には出られないようにうまく調整してある足にある鎖。外そうと何度ももがいたため足には赤い跡。見ているだけで痛々しい。


「痛いだろうに」
「そう思うのなら、外して下さい」
「じゃあ外したら君はどうする?」
「・・・どうする、とは」
「君は僕のもとから逃げるだろう。・・‥なまえはずっと僕と一緒に居るって言ってくれたよね、君も僕を拒否するのか」
「違う!それは、」


・・・あなたがおかしくなる前の話。そう言おうとしたら槙島さんは私を殴る。
ごろんごろんと部屋の中を転がった。腕を強打したみたい、すごく痛い。それは涙が出そうなくらい。だけどどうしてだろう。いつの間にか涙が出なくなってしまった。末期なのか、私は。・・・違う。末期なのは槙島さん。


「・・・痛い」
「僕の心はなまえ以上に痛いよ」


そうですか。私はあなた以上に心が痛いですよ。


「別に僕だって殴りたくて殴ってるわけじゃないんだ。・・・君が僕を怒らせるようなことを言うから、僕は止む無く殴ってるんだ。言わば躾だよ」
「し、つけ」
「そうだよ、だからなまえは何も心配しなくていいんだよ」
「っ」
「僕がずっと傍に居るから、ね」


子供に諭すように優しく語りかけた。けれど言っていることは何よりも狂っている。今のこの人の心は私には全く分からない。というか理解できない。平気でこんなことをするなんて、潜在犯ではないのが本当に不思議である。


「それに君はもう社会には戻れない」


一番恐れていたこと。それを口に出されたのはかなりのダメージだった。私はこの人に監禁されてから色相は濁り、潜在犯になった。だからこそシビュラシステムの支配する社会には戻ることができないのである。槙島さんは本当に賢い、いや、狡賢いといった方が正しいかもしれない。彼は私を言葉と暴力で縛りつける。


「なまえ。愛してる」


彼はいつもと同じように私に跨り、深い口付けを落とす。
優しかった槙島さんはいったいどこに行ってしまったのだろう、と今でも少し考えてしまう。そんな私は愚かなのか。
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