初めはただ、羨ましかっただけだ。
それがまさか今の様な感情になるとは…。
なんでなんだろう。
ぼんやりと外を見ながら私は溜息をひとつ落とす。
自由ではなくて制限されている生活をしている筈なのに。
どうしてこんなに自然で自由なんだろう。
そしてどうしようもなく惹かれてしまう。
あの時からだったのだろう。
◆◇◆
「じゃあ、この手順に沿っていきますので、お願いします…って佐々山さん、勝手に先に行かないでください。」
すでに自分の行く先のはるか向こうにいる人物を追いかけながら、話はまだ終わってないですと告げる。
「手順なんていらないだろ。対象見つけてドミネーターでずどんと一発かませばそれで終わりだろ。」
咥えタバコのままにやりとこちらを見ながらふんふんと鼻歌を歌いながら歩いていく佐々山さん。
私は勿論その答えが正論すぎて何も言えなかった。
そして彼はあっという間に対象を見つけて排除してしまう。
「なんであそこにいるってわかったんですか?」
私はマップを見ながらだいたいの場所まで来ていたのだが、近くまできて対象は見失ってしまった。
「なんだろな。猟犬の勘ってやつか?」
そう嬉しそうに言いながら、またタバコに火をつける。
いつもは煙たく感じて服に匂いがつくのが嫌だったのにその時だけはなぜか心地よいと思ってしまった。
◆◇◆
「おい、みょうじ?」
振り向くとそこには先ほどまで私の頭の中を占めていた人物。
あれからもう三年。
私の届くことのない想いは更に自分の中で膨らみ続け胸を締め付けている。
佐々山さんは私の隣に並んでいつもの様に煙草に火をつける。
気持ちよさそうに肺に煙を入れている姿をぼんやりと見ていると、
「ん?なんだ?吸うか?」
いつもの様に私にタバコを薦めてくる佐々山さん。いつもは断るはずなのに…
私は少しだけ背伸びをして佐々山さんの手に持っているタバコをひょいと持って口に含む。
「…おい…吸いかけなのにいいのか?」
驚きながらも、新しいタバコに火をつけ始めている佐々山さん。
「苦い…。」
「ほら、言わんこっちゃない。エリート監視官サマは俺らみたいな事しなくていいの。」
「……でも悪くない。」
今までもやもやとしていた気持ちが少しだけはっきりしたような気がした。
ちょっとだけ彼の領域に踏み入れてみたかった。
そう思いながら佐々山さんと同じように煙を吐き出すと、嬉しそうに微笑んでいる彼がいた。