5 | ナノ
寒い……。

ベットに踞るとふと気づく。
昨晩まで熱を分けあっていた人物は私の隣には居なかった。

『また、か…』

彼の事だどうせ仕事にでも行ったのだろう、と考える。
いつも事情の後シャワーを2人共浴びて、一緒にベットに入り、共に眠りに就く……そして、私が朝起きたら隣は誰も居ない。
そんなことが当たり前になってしまった。

元々、甘えたの私は人肌が好きで、よく人に抱きつく癖があった…。
彼はそれを不満に思ったのか、『抱きつくなら、俺にしろ!!』と顔を赤くして言っていた。

あの頃が懐かしい………。


同じ職場の同僚から愛しい人に変わったのがその言葉のせいだった。そんな私達を狡噛はよくからかっていた。

でも、その狡噛は執行官落ちしてしまい、愛しい彼はそれをショックに思ったのか、その日から共に朝を迎えてはくれなくなった……。
最初は驚いた。彼の端末に慌てて連絡をし、彼に何かあったのか心配をした。だけど、端末から聞こえた声はとても冷たいモノだった。

「……なんだ?」

『宜野!!?今何処にいるのっ!?何かあったの!?私、貴方が心配d「仕事場だ…、それと今日から俺の朝食は要らない。」っ!!!?………そう、わかったわ…仕事中にゴメンなさい。それじゃあ…。』

ブツリと通話が切れた。

あの後、私はシャワーを浴びながら泣いた。シャワーから流れる水か自分の涙かわからない程に…。

『……あの頃はまだ泣いてたわ…』

今はもう、泣きすぎて涙は枯れてしまった。

視線をベットルールのドアへと向ける。ドアが開いていた。
いつもなら彼はきちんとドアを閉めて行くのに今日は開いている…。

珍しいと思いながらドアを閉めに近づく…、するとドアの向こうからいい香りがする。

『え?』

今度は疑問と恐怖が込み上げてきた。この時間、宜野は仕事に行っている、この家には私一人しか居ないはずだ…。なのに、キッチンの方から香りがする。

誰か居るのか確かめにキッチンの方へと歩みよる。
キッチンのドアに2つの人影が映っていて、なにやら小声で話しているが聞こえるが内容までは分からなかった。

恐怖心で足が震えるのをこらえ、ドアノブに手を掛けて一気にドアを開けた。

『誰っ!!!?』

ドアの向こうには今仕事に行っているはずの宜野と狡噛がエプロンを着けて立って居た。

『宜野っ!!!それに狡噛まで!!!なんで居るのっ!?』

私は驚きで倒れそうになったが何とか持ちこたえて言った。

「なっ!?なまえ!!!起きてたのか!?」

「あ〜あ、やっちまったな……」

宜野は私と同じように驚いていて狡噛は呆れた様子で手を額に当てていた。

『起きてたのか…って宜野こそ、仕事はどうしたの?』

「………」

「もう、諦めたらどうだ?見つかっちまったしな……」

狡噛は宜野座の肩にポンッと額に当てていた手をのせて言う。

『見つかったって……なんなのよ!!一体!?』

私はなんなのかサッパリわからないため少し声を荒げて言った。

「……今日は…、お前の誕生日だから、日頃の礼も込めて何かしてやろうと思ってな…今まで狡噛と相談した結果がこれだ」

そう言って目の前のケーキを指す。

『……誕生日…私の?…』

今日は私の誕生日だったか?と思いながら端末の日付を見る。

………私の誕生だ。

「コイツ、俺にいきなり料理は出来るか?なんて聞いてくるから驚いたぜ、まさかなまえの誕生日だとは最初は思ってなかったが……」

『私のために……?』

ポツポツと涙が溢れる。

「あぁ…」

狡噛はソッと私の頭を撫でて、私に言う。

「俺が先に言っちまうのもアレだからな、ほらっ宜野!」

今度はボンッと宜野を叩いて私の前に宜野をつき出す。

『?』

「……誕生日…おめでとう……」

恥ずかしそうに言う彼が可愛いで抱きつく。

『ありがとう!!宜野!!』

宜野の肩口越しに狡噛を見て、同じように礼を言う。


「ありがとう、狡噛…今までで一番嬉しい誕生日だよ……」

宜野に腕から抜け出して狡噛の前に立つ。

「良かったな…ほら、宜野んとこ行け。俺は今日は帰るぞ」

笑いながら言う彼に心が締め付けられた。

『…うん』

「監視官無しで帰れるわけがないだろう!!バカが!」

宜野が空かさず言う。

「ッチ!!わかった…、さっさと行くぞ」

「貴様のせいだろうがっ!!」

2人で玄関まで口論をしながら歩く。
それを私は微笑ましく見ていると宜野が振り返って言った。

「…直ぐに帰る……、だから待っていてくれ」

真っ直ぐ私を見て言う彼が最近までの彼とは全く別人のように思える程、優しくて凄く安心した。

『ええ、待ってる…。だから……早く帰って来てよね』

笑って答える私に満足したのか、彼は玄関向き直って狡噛に言う。

「さっさと行くぞ!!狡噛っ!!!」

「…さっき俺が言った台詞だぞ?宜野」

「五月蝿いっ!!!」

玄関のドアを開けて狡噛が足を一歩踏み出したかと思うと今度は2人共振り返って私を見て言った。

「「Happy Birthday…なまえ」」

一瞬驚いたが、私が何か言う前に2人は直ぐ出て行ってしまった。

「貴様!!!被せるな!!」

「そのままお前に返すぞ、その言葉」


ドアの向こうでやっぱり口論をする2人が、まるで狡噛が監視官だった頃のような様子に私はクスリと笑った。

『……ありがとう………、ん?』


キッチンの机の上にノートの切れ端のようなものが置かれていた。
その切れ端には" Thank you for being born "としか書かれていなかった。

その言葉に彼らしいと思って、ソッとそのノートの切れ端を撫でた。

彼が帰って来たら、私が飽きるまで抱き着いてやろうと思う。
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