※夢主は佐々山の元彼女、自傷行為あり
彼がいなくなってから1年。
私の周りも大きくかわった。
出世街道まっしぐらだった狡噛さんは執行官に。
光瑠のいなくなった後には縢くんという若い男の子がきている。
変わった…。
家主がいなくなった部屋で一人呟く。
非番の日はすることもなくぼんやりと彼の事を思い出す。
彼が好きだったタバコを吸いながらグラスを傾ける。
そうしていると、意識がぼんやりとして、彼に会えるような気がするからだ。
ふわふわと舞うように眠るように死んでいけたら…。
そんな事を考えていると机のグラスが音を立てて割れる。
アンティークのグラス。
光瑠が気に入っていたグラス。
割れてしまった今ではもう元には戻らない。
グラスを拾っていると、いつの間にか傷つけたようで紅い血がポタポタとでている。
まだ、私は生きてる…。
不思議なくらい。
少し大きめな破片を手に持ち左手首に這わせると、更に血が溢れてくる。
どうやら今日は飲み過ぎたようだ。
じんわりとした心地よい痛みとともにその場で意識を手放した。
◆◇◆
「おい。」
眼を覚ますとなぜか私はベッドの上だった。
確か、お酒を飲んでグラスが割れてそれから…。
思い出そうとするが、頭に鈍い痛みが走る。
「狡噛さん…。」
起き上がると血がでていた部分は丁寧に包帯が巻いてある。
おそらく、狡噛さんが巻いてくれたのであろう。
余計なことを…。
「部屋に来たけど、返事がなかったら心配した。何かあったんじゃないかと思って。」
そう言いながら彼はタバコに火をつける。
光瑠がその場にいるような感覚になってしまう。
「………やめて…。」
絞り出した声はひどく弱弱しい声だった。
「…まだ思い出すのか?」
そう言いながらも彼はタバコを吸い続けている。
ひどい男だ。
そう思いながらも狡噛さんは段々と光瑠に似てきているような気がする。
私が好きだった頃の光瑠に。
それがひどく嫌悪感をもつほどに。
「なぁ、なまえ、キスしてもいいか?」
驚いている私をよそに彼は噛み付くようなキスをしてくる。
じんわりとした暖かいものが体中を駆け巡る。
私は彼の背中に手を回しながら、少しだけこの酔狂な誘いに乗ってみてもいいかなと思っていた。