2 | ナノ
※ヒロインは狡噛の彼女設定

目が覚めると、そこは今時珍しい内装ホロをつかっていない部屋だった
どこだかわからないが少なくとも私の知っている場所ではない

立ち上がろうにも、椅子に後ろ手で縛られて自由に動けなかった
不自由な体とは対に頭は正常に機能して恐怖だけがゆっくりと全身をむしばんでいく
何とか動かすことができる首から上を精一杯回して周りの状況を把握しようとしたが
確認できる範囲は限られていて結局何もわからなかった

そもそも何故私はこんな場所にいるんだろう
記憶をさかのぼらせてみる

確か公安局のみんなと事件の捜査をしていて、
すると突然怪しい臭いがする布を口にあてがわれて、
それから… それから…?

きっと意識を失って此処に連れてこられたんだろうな
少し非現実的で他人事のように考えてしまう

さて、どうしようか
このまま考えていたって状況が良くなることなどまずないだろう

とにかくここから逃げないと
大きく体を揺すってどうにか椅子から抜けだそうと試みる
だけど現実は非情で空しくガタガタと鳴るだけだった

すると突然部屋のドアが開いた
今の椅子の音で相手にばれてしまったのかもしれない


「やっと目が覚めたかい」

「っ!? 」

そこに現れたのは見覚えのある顔
今まで私と慎也が必死になって追ってきた男、槙島聖護だった

「なんでお前がここに!?」
「なんでか…
 それは僕にはよくわからないな
 しいて言うなら君に魅かれたから、かな…?」

今まで人を殺してきたとは思えない笑みで語りかけてくる
人の好さそうな笑顔なのに恐怖が背筋を駆け上がる

「アンタとは面識はないはずだけど…?」

この恐怖を悟られないようになんとか強気な表情で声を絞り出す

「確かに僕と君とは直接会ったことはないからね
 でも僕は以前から君のことを知っていたんだよ
 それは君も同じだろう」

ゆっくりと頬を上へ、下へと撫でられる優しい手つきに今までたまっていた恐怖が溢れ出しそうになる
こんな奴の前で…!
ぐ、と唇を噛みしめて堪えた

「そんなに噛んでいると血が出てしまうよ」

頬からスッと唇に指が移動される
歯が唇から離れる

「っ…なんで…あんたは、人を殺してそんな平気で、、いられるのよ…!」

ついに溢れ出した涙を止めることができなかった
恐怖、自分の不甲斐無さ、そして仲間たちへの申し訳なさ
すべてが感情の雫となって流れ落ちた
あぁ、こんな憎いやつの前で弱みを見せるなんて

いつの間にか体は温かさに包まれて槙島の顔は触れそうなくらいに近づいていた
「頬へのキスには親愛という意味が含まれているらしい」

小さなリップ音の響かせて槙島は頬にキスをして、涙を舐めとった

「君にはどこか親しみを感じるよ
 もしかすると僕たちはどこかでつながっているのかもしれないね」

猟犬が獲物を手に入れた時のような高揚とした表情で唇を一舐めした

ごめんなさい慎也
私、あなた以外の男で汚れてしまった
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