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そう、彼との出逢いは私の平凡な日常に変化をもたらすものだった。
シビュラシステムに管理されたこの世の中。楽といえばとても楽だが、考える必要のなくなったヒトはただの機械ではないのか…。そう感じてしまう。
そんな退屈な人生にスパイスを与えてくれたのが彼だった。
働いていたカフェで声をかけてもらい、親しくなりいつの間にか彼の家で過ごしている。
勿論、彼と生活しているので夜を共にするといった事もしばしばあった。しかし、彼と私の関係は特にコイビトといった様な甘い関係でもなかった。じゃあなぜこの様な関係を続けているのかと言われれば悩んでしまう。彼は今まで自分のみていた世界とは少し違っていた。常に色々な本を読んでいるせいなのか多くの事を知っていてそれをひけらかす訳でもなく自然に私にたくさんの事を教えてくれる。今まであまり何も考えずに生きてきたせいなのか彼の話を聞くのがとても好きだった。知らなかったことを知るという喜びを教えてくれたのも彼だった。
最近は少し忙しいのかあまり家にいる事もなく、彼がいない部屋はがらんとしている。もともと素性がわからない彼だったので何かよくないことをしているのもわかっていた。しかし私は彼から与えられるものによって得られるモノを拒むことができなかった。そう、いつの間にか彼に惹かれていた。いつからこんなに貪欲になってしまったのかと思うくらい彼の事を好きになっている、もっと知りたい、もっと理解したい、もっと抱きしめてほしい、もっと、もっと…。心の中で気持ちが溢れてしまう。
そんな思いで気が狂いそうになっていた頃、彼が部屋に戻ってきた。出ていった日と変わらない彼をみて安心すると同時に私は彼に抱き着いた。
「なまえにしては珍しく大胆だね。」
嬉しそうに話す彼の口を自分の口で塞ぐ。彼も最初は驚いていた様子だったが、徐々に彼のペースになっていく。私は埋まらない溝を埋めていくような意味で彼に身を預ける。
次の日、朝眼を覚ますと、彼はいなかった。机の上を見ると本と一冊の紙がおいてあった。
[帰ってくるまでに読んでおくように。君にはまだまだ話し足りないことがあるからね。]
本を見ながら珍しく私は笑ってしまった。置いてあった本は恋愛小説だった。
不器用な彼の優しさを感じながら彼が帰ってきたらどんな話をしてくれるのかを楽しみにしながら私は彼から与えられた宿題をこなすことにした。
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