キラキラ光る。眩く輝く金糸に目を奪われたのは沖縄独自の端正な顔立ちが、尚一層引き立てられたからに違いないと思った。


「おい。やー怪我ぬねーらん?」

『あ、大丈夫です』

「ん?…標準語?」

『こっちに越してきたばかりなので』

「やまとんちゅーかよ…助けて損したさぁ」

「こら、平古場」

「あいひゃーわっさん」


華やかな容姿とは反面、鋭い目つきに何とも言えない暴言。「何なんだコイツは」と第一印象に芽生えた好印象を悉く覆すほどの衝撃を受けたのは後にも先にも彼以外見当たらない。




「はなこ、ぬーば考えてるんさぁ?」

『あ、凛』


あの時は絶対仲良くなりたくない、寧ろ仲良くなるもんか!そう心に決意してたのに人生とは本当に先が分からないものである。目の前にいる平古場凛とはあの最悪な出会いから最早2年の月日が経ち、今年で3年目を迎えようとしている。2年とは長いようで短くて、短くて長いものである。まさかの偶然の極みで同じ高校だと判明、その後の3年間同じクラスになるというから驚きだ。


「不細工が更に不細工になるぜ」

『もっとマトモな言葉を選べないのか』

「やしがじゅんにやし」

『よし、黙ろうか』


初対面の頃から変わらない横暴な言葉選びは今でも健在で、でもそれは彼の本心から来ている言葉だと分かっているから腹立たしさも感じにくくはなった。(それでも時と場合によってはカチンとくることもあるのだが)良くも悪くも自分に素直の凛とは初めこそ衝突したものの、今となっては傍にいるのが当たり前となっている。本当に不思議な話だ。


「まだ終わらんさぁ?」

『あと、もうちょい』

「遅すぎやっし。へーくしれー」

『凛五月蝿い』

「おー、まぶやー」


部誌を書いてる最中、やたらと焦らす凛を叱責しながら記入事項にペンを走らす。今日は木手くんが委員会で部活を休んでいたから、自由気ままな部員たちを纏めるのは非常に大変だった。知念くんと不知火くんが手伝ってくれなければ、きっと練習にすらならなかっただろう。…本当、何でマネージャーの私が部長補佐みたいな役目を担ってるのだろう。本来は副部長であるはずの甲斐くんがするべきなのに。まぁ先陣きって騒いでた甲斐くんが纏めるなんて夢のまた夢に近い訳なのだけれども。


『よし、終わり!…ってあれ、凛?』


部誌の記入を完了し待ってくれている凛に視線をやれば、ウトウトと夢の中へ旅立ち中。急に静かになったなぁと思えばまさか寝入っているとは思わなかった。あんだけ騒いでたかと思えば部屋の温かさに誘われて寝入るとか、本当に気ままな猫にしか見えない。


『(起こすのも可哀想…)』


あまりにも気持ちよさそうに眠っているものを起こすのは気が引ける。そう思いながら凛の横にひとまず腰を下ろせば、窓から零れるオレンジの陽光を浴びてキラキラ光る金糸に視線が捕らわれた。出会った当初も感じたけど凛の髪は本当に綺麗だ。それは端正な顔たちをしているというのも在る意味第一前提にはなってきてはいるが、それよりも凛自身が自分を魅せることに手間を惜しまない所にも理由があると思う。触れば柔らかい、染めた髪とは思えないほどの指通りの良い金糸を、指先でクルクル遊びながら梳く。あの時は凛のこと疎ましいとしか思わなかったのに、今となっては凛が傍にいるだけで温かい気持ちで胸が一杯になるのが嬉しいようで何処かこそばゆい。


「ん、…はなこ…?」

『あ、起こしちゃった?』

「なんくるないさー…」


凛が起きてしまった。申し訳ない気持ちで手を引っ込めようとすれば、上から手を重ねられもっと、とせがまれてしまった。寝起きにしか見れない、凛の甘える姿に胸がときめく。何、この可愛い生き物。


『…いっつもこうなら良いのに』

「わんが甘えたらやーが甘えれないさぁ」

『…あんまり甘やかされた覚えないんだけど』

「はぁ?でーじ甘いやっし」

『いやいやいや』


いつもの度重なる暴言の数々を忘れたのか。糖度なんて寸分も含まれていないに等しいのに、何なんだそのドヤ顔は。私の想いを知ってか知らずか凛は右手を私の後頭部にそっと回した。そして、


『〜ったい!』

「あいひゃー、わっさん」


少女漫画のように“優しく抱きしめられる”を期待した私が馬鹿だった。思いの外に力が籠もっていた右手は私の後頭部を抱え込んで凛の胸板に華々しく頭突きをカますことになった。当然ながらに、痛い。


『頭痛い〜…』

「でーじ軟弱さぁ」

『ちょっと!誰の所為だと…!』

「やくとぅゴメン言ったさぁ」


悪びれる気が毛頭なく何処までも不貞不貞しい凛は、いつもと変わらず凛らしくあって、何だかそれが可笑しい。埋めた胸元に耳を寄せれば凛の鼓動が心地良いリズムを刻む。ギュッと強く抱きしめられたかと思えば、耳元で囁かれる甘い言葉。


『…凛、私もだよ』


積み重ねる日々に愛おしさが募っていく。何もない一日でも凛がいたら幸せだと心から言える。覚えていてくれたのが嬉しくて、思いっきり凛の首に腕を回して抱き付けば「ふらー」と言いながらも優しく私を抱き締めてくれた。


出逢えたことに感謝の気持ちしか見付からない。 愛おしい想いに心からの口付けを添えて大好きな君に贈ろうと思います。凛と想いを通わせて今日は丁度一年目。





Happy days
(毎日が掛け替えのない時間です)


20130131

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