「どないしたん??」
『んーん、…何も』


本真かいな。そう爽やかに笑う蔵に何故か凄くドキドキした。なんかこう、単純なドキドキじゃなくて、もっといやらしい感じの。別にこの会話の前後に何かあった訳じゃなくて。蔵はベッドで雑誌を読んでいて、私はベッドの下でクッションを抱えながらテレビを観てた。…筈なんだけど。


『(蔵、綺麗…)』


初めは蔵の指先に目がいった。テニスしているのに無骨じゃないな、でも女の私より大きな手だなって。そっから形の綺麗な口唇に移って、意志の強い目や幅の広い背中、柔らかい猫っ毛のミルクティーブラウンの髪の毛。付き合って大分経つけど、まじまじと見たことがあまりなかったからなんだか変な気分だ。


「何処見とるん」
『蔵、』
「俺??」
『…綺麗だなって』
「なんそれ、なんやむっさ嬉しいやん」


そっと視界で白が揺れた。動いたのは蔵の左手で、まるで壊れ物を扱うかの様に指先が触れる。髪からゆっくり目、鼻、そして唇をなぞる。ただそれだけの行為なのに…


「なんかな、」
『うん??』
「なんかエロい気分なるわ…」


まるで愛し合った時の様な感覚を得た。それはどうやら蔵も同じの様で、照れ臭いけど何処か嬉しい。胸の高鳴りはさっきよりも増していて、蔵の雰囲気が変わった。蔵の首へと腕を絡めれば“ええん??”と戸惑いがちに揺れる瞳。付き合って大分経つのに私を気遣うのは初めの頃と何一つ変わらない。そんな蔵の姿がより一層私の気持ちを高ぶらせる。


『私の全ては蔵の物だよ』
「なら俺の全てははなこのモンやな」


私の体に優しく這わせながら蔵は至極当たり前の様に言い放った。その心地好さに酔いながら、帯びる熱に身を委ねた。






指先から伝わる
(何処かの詩人が唄った言葉はきっと事実。指先が触れる箇所から愛が溢れ出して止まらない)


20110102

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -