『にお先輩、にお先輩、にお先輩!!』
「おー、お前さんか」


欠伸を噛み殺しながら中庭に向かえば、ふわふわ揺れるツインテールが視界を過ぎった。視線を向ければ最近親しくなった一人の後輩。


『にお先輩、にお先輩』
「何じゃ??」
『さっき宇宙人を見たんですが!!』
「ダウト」
『ちぇっ』


二つ下のコイツは突如俺の前に現れた。少し普通の人間と感性がズレているコイツは、詐欺師という異名を嘘吐きのプロと判断したらしい。それからというものの、会う度俺を試す様に些細な嘘を繰り出してくる(どれも小学生レベルのものなのだが)


「後輩、」
『何ですか、にお先輩』
「お前さん名前はないんか??」
『名無しの権兵衛です』
「はい、ダウト」


知り合って一ヶ月経った。しかしコイツが二つ下だということ以外何の情報もない。別になくても困らないが、此処まで纏わり付かれると多少なりとも興味が沸くというのが人情ってモンではないのだろうか。


「本当にお前さんは…」
『にお先輩は私のことが気になりますか??』
「多少なりに、のぅ」
『じゃあ、嘘と本当を交えながら教えてあげます』


本当に楽しそうに、でも挑戦的に笑う後輩を見て沸き上がる好奇心。…年下であるにも関わらず中々面白い。


「じゃあもう一度聞くが名前は??」
『名前は教えませんが名字は幸村です』
「幸村??」
『因みに兄が居ます』
「あの幸村じゃなかろうな??」
『そこはにお先輩の考えるとこです』


笑った雰囲気は幸村に似ていないこともない。が、果たして本当に幸村の妹なのだろうか。一問目から中々真偽が付けづらい質問を出してきたもんだ。いつもは小学生と大差ない質問を出すにも関わらず。その後二・三の質問で攻防し、最後の質問になった。では最後の質問です。そう告げた後、後輩は高らかに言った。


『私はにお先輩が好きです』


今までで一番色濃い笑みを浮かべた後輩を見て、改めてヤられたと感じた。悪戯をする子供は見事に勝利をもぎ取ろうとしているのだ。


『さあ、ドッチ??』


これは上手く嵌められた。感じたのは敗北感より高揚感。とにもかくにも頬を染める後輩を腕の中に閉じ込めるのが先だろう。






さあ、ドッチ??
(『…いつもみたいにダウトって言わないんですか??』「真っ赤な顔をして嘘だったら中々見上げたモンぜよ」『ズルいなぁ…』「お前さんには負けるぜよ」『因みに私、さっきの質問全て本当ですよ』「(…マジで幸村の妹なんか…)」『頑張って下さいね、にお先輩』)


20101210

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