静寂の部屋の中、唯一人。あまりの静けさに秒針の音がやけに耳に触る。カチコチカチコチ、無機質な音が部屋一杯に響き渡っている。どうしよう、胸中はそんな思いで一杯だった。今日は突如襲われた眠気により早く床に就いた。時刻で言うならば19時。眠るには早過ぎる時間である。朝まで眠れぬかもしれないという不安が念頭にあったものの、強烈な睡魔に抗うことが出来ずそのままベッドへとダイブしてしまったのが運のツキ。案の定朝まで眠ることが適わず目が醒めてしまった。


『静か…』


深夜ということもあり家族も街も寝静まり、辺りがシンとしている。何度か眠ろうかと試みたものの、一度休めた体をもう一度休めるのはかなりの困難だった。カチ、カチ、カチー…、一秒、また一秒と秒針は確実に時を刻んでいく。だが一人の時間程、時が進むのを遅く感じることはない。淋しい、無意識ながらにも零れ落ちる感情。自室には自分しか居ないのだからその言葉に返答がくることは当然ないのだが、それでも返答がないことは淋しさを倍増させる糧になる。寝返りを打ちベッドの脇に置いた携帯に手を伸ばし、暇を潰そうと操作する。が、いつも自身に構ってくれる友達も既に夢の世界。まるで世界で唯の一人だけに感じる。別にそんなワケでもないのに馬鹿馬鹿しい答えに至るのは、思春期特有のものなのか、深夜の心細さ故なのかは決して定かではないが。


カチ、カチ、カチ、…いつもなら響く筈のない無機質な音は、ここぞとばかりに自身の存在を存分に主張していた。静寂を刻む音は世界を断絶している様に何故か感じて。無性に淋しくて怖くなる。誰も居なくなったらこんなに怖いんだ。温もりがない世界。怖い、怖い、怖い―…


『…ぇ、??』


得体の知れない恐怖から目頭が熱くなったその時、自身の手の中で大きく存在を主張した。無機質な針の音を遮断し鳴り響くのは間違いなく自身の握り締めている携帯。


『も、しもし??』
「お、起きとったん??」


あまりにも驚いた為か声が裏返った。恥ずかしい。どうやら気付かれている様で電話越しでククと小さく笑う声が聞こえた。


『にお…、どうしたの??』
「ん…はなこの声が聞きたくなった、」


夜中やと判っとるんやケド…と申し訳なさ気に受話器越しに言うにおに無性に愛しさを覚えた。


『に、お…』
「どうしたん??」
『なんか、安心した…!』


別に何かあったワケじゃない。ただ眠れなかった。一人なだけだった。でもその空間が何よりも淋しくて怖かった。不安で一杯だった私はにおの声を聞いて堰を切って涙が溢れ出した。事情を知らないにおは当然狼狽するワケで。申し訳ない気持ちで一杯なのに、涙が零れて止まらなかった。






真夜中のcall
(俺がいつでも居るよ、受話器越しから聞こえた声が私の不安を全て取り除いた)


20100726

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