「好きじゃよ」
「好き、じゃ」
「お前だけ…」
まるで自分に言い聞かせるように、甘く切なく、一つ一つを囁く。コトを終えたベッドで二人、縋り付く様に抱き着く。瞳は不安に揺れているのに、ソレを隠すように口角を上げる仕種は、酷く愉快で滑稽でしかない。
「好き、じゃよ…」
でも何より滑稽なのは、そんな彼に溺れている私かもしれない。
『好きよ、…雅治』
例えあの人の影を重ねてると知っていても、貪欲な程彼を渇望している私には、縋り付く以外手立てはないのだから。
渇望
(愚かだと言われても構わない。それでも私はアナタが欲しい)
20100610