「もう止めんしゃい」
『やーだ』
「フラフラじゃろ??」
『そんなコトないもーん』
酒が飲みたい、そうはなこが言うものだから、近場のコンビニでカクテルやら酎ハイやらを買い集め、酒盛りを始めた。だが、はなこは存外に酒に弱いらしい。缶酎ハイの二本にも満たぬ量にも関わらず、顔は全面的に朱色を帯びている。初めて一緒に飲んだのだが、まさかここまで弱いとは予想だにもしなかった。
『まさはるぅー』
「ん、なんじゃ??」
『ちゅしたいー』
はなこはどうやら酒が入ると甘えたになるらしい。舌ったらずながらに俺を求めるはなこが酷く可愛らしく感じた。いつもと違う彼女の姿に思わずときめいた俺、少し自重すべきだろうか。
『まさ、ちゅー』
「はいはい、ちゅー」
強請られるままに小さく可愛らしい唇に軽く一つキスを落とす。が、どうやらそんなものじゃ、このお姫様はお気に召さないらしい。もっと、とせがんで腕を回してきた。
「俺、止まらんかもよ??」
『いいよ、一杯ちょうだい??』
「酔っとるけぇ早う寝んしゃい」
はなこに無理矢理布団を被せば、眉間に皺寄せて不満を零したが、段々うとうとと瞼を落とす。少し勿体ないことをしたかも、とか最早今更の話で、自分のことだけではなく、愛しい彼女を気遣うのが先決だ。あー俺かなり変わったな、自分のこと後回しとか。はなこが可愛過ぎるのが悪い。
そんなこんなで寝ているはなこの傍らで、つい先日購入した雑誌に目を通す。余りかえった酒に手を出しつつ、なるべく物音を立てぬ様静かに自分の時を過ごしていた。…筈だったのだが。
「え、」
視界が一気に反転、背中が熱を持って痛みを帯び始めている。視界には自室の照明と先程寝入った筈の愛しい彼女。なしてはなこが起きてる、という疑問よりも、まさか俺押し倒された、という疑問のが遥かに大きい。
『はろー』
「…はろー」
『どうも、はなこちゃんです!』
にぱーと効果音が付きそうな位な無邪気な笑顔を見せる彼女。どうやら酒はまだ抜けていない様で顔の朱色は変わらない。寧ろ顔だけには留まらず朱色は体にまで及んでいた。キャミソールから見える素肌の赤さがなんとも形容し難い。と、色々考察してみたものの、何故俺は押し倒されているのだろう??
「はなこ、」
『ん〜??』
「退きんしゃい」
『やー』
「俺痛いんじゃケド…」
『でもダーメ』
「今から何するん??」
『気持ちぃーこと』
「…は??」
言うや否やはなこは俺のシャツを巻くし上げて舌を這わせてきた。急な展開に思わず思考停止。…では、なくて。
「ちょ、はなこ。普通逆じゃろ」
なして俺がはなこに襲われとるん。とかとか、思っている間に最早Tシャツは剥かれて、俺は一人半裸状態。とにかく辞めさせようと思い、起きようとする俺に対し、上から掛かる圧力。
『まさ、』
はなこ、そう言葉にする筈だった言葉は音になることなく飲み込んだ。ただ名前を口にしただけにも関わらず、はなこがあまりに妖艶で艶やかでついつい魅入ってしまった。
『…起きちゃヤだよ、』
いつもと違う雰囲気。あどけなさが残るはなことは違い、女の妖艶さが全面的に感じとれた。酒の効力だろうか。頬は朱色に蒸気し、目は潤んで、体には既に熱を帯びていて。濡れた唇はエロさが増してたまらない。
『まさ、…シよ??』
「良かよ、」
滅多にない機会。いつもとは違うが、たまにはこれはこれで良いかもしれない、と艶やかさに濡れたはなこに流されつつ、そのままの情欲に身を委ねた。
酔って酔わせて
(酒に酔った君の熱に、触れて濡れて猥らにそっと酔わされる)
20100523