『白石ー』

「なん??」

『すきー』

「知っとる」

『…白石はー??』

「俺もすきやでー」


白石嘘吐きやぁ、そう言うて隣の机でふて腐れてるんはクラスメートのやまだはなこ。去年から一緒やから今年で2年目、付き合いは長くも短くもないコイツはどうやら俺が好きらしい。らしいって付けるんは限りなく曖昧やから。いつからかは忘れたケド、その日から毎日言われる愛の言葉。毎日言われ過ぎて最早挨拶と化している。告白はよくされるケド、こんなフランクなんは初めてで正直どう対処すればえんか正直判らん。と、いうより本気なんか冗談なんかいまいち量り兼ねる。例えるなら小春が俺に言う好きにかなり似通ってる。せやから下手に動くに動けん。もし勘違いやったら俺痛すぎるし。


『白石アカンわぁ…』

「何がや??」

『もっとこう…愛が溢れる好きが欲しいん』

「充分やってるやん」


足りんしなぁーいうてガタガタと俺の椅子を揺する。おい、こら今ノート書いとるんやから邪魔しなや。そんな俺の気持ちとは裏腹に揺する力は増すばかり。完璧な板書になる予定やったノートにはミミズの様な羅列が並んだ。あーこれ書き直し決定や。しゃあない、ノートを閉じてやまだと向き合えば、最初からそうすればええねんと笑いながら言われた。いやいや、何でやねん。


『あ、白石今日部活はー??』

「勿論あるで」

『そしたら一緒に帰らん??』


さっきまで好きや好きやいうて騒いでたんもつかの間、話題はあっという間に転換する。やから余計判らんいうんは此処だけの話やケド。構へんで、そない言えば帰りなんか奢ってとか言いはじめたから軽くデコピンかましてみた。何で俺が奢らなアカンねん。


『あ…なぁ白石ー』

「なん??」

『私好きな人に告ることにした』

「…は??」

『やから告白するのー』


また話題転換か、そない思うてたら急にそない言うて嬉しそうに笑うやまだ。コイツの笑顔はいつも気持ちいいと感じるケド、なんやその顔はムカついた。何でムカついたんかは判らんケド。


「そうか、そら良かったなぁ」

『なん、言うことそれだけ??』

「…ほな頑張りやぁ」


おもんないわぁ、そない零すやまだ。いやいや、おもんないんは俺やから。せやけどお前俺が好きや言うときながら別に好きなヤツ居るとか本真どないやねん。やっぱアレか、小春と同じノリでか。なんや知らんケドむちゃくちゃ苛々してったんは何でや。


『なぁ白石ー』

「…なん??」

『いつ言えばええと思う??』

「今すぐでもえんとちゃう??」

『今??迷惑やないー??』

「昼休みやし別に構わんやろ、」


正直いつ告るとかどうでもええ。そない思うてるんに俺の心臓バクバク。ほな今から告るわぁ言うてるやまだ見て何でこない焦ってるんやろ、本真俺意味判らん。やまだが誰を好きでも関係ないやん。俺とやまだは友達やねんし、俺もそれ以上の感情持ってないんやから調度ええ。そない思うてる筈やのに…


『なぁ、白石ー』

「今度は何や??」

『好き、やで??』

「そらおおきに」

『本真に好きやねん、白石が』


嘘とちゃうで??本真に好きなん。クスクス笑うやまだを見てフリーズ。目を見開く俺に何なんその顔むっさ不細工やで、とか失礼なこと抜かしよったんもあっさり耳からすり抜けるくらい。


「…は??」

『は??って何なん、は??って』

「いや、自分告るんやないん??」

『せやから告ったやん』

「え、…俺??」

『本真冗談や思うててんなぁ』

「そら思うやろ…」

『残念、本気やってん』


白石酷すぎ。泣き真似しながらクスクス笑うやまだにただただ呆然。


「え、…本真に??」

『うん、本真に』

「本真の本真に…??」

『やからーせやってば!私は白石蔵ノ介が好きなん、理解出来る??』

「おん…」


停止した思考回路を必死に動かせば、よろしいとふんわりと笑いよった。心臓はまだバクバクしよるケド、さっきみたいな焦りは一気になくなった。


『なぁ白石ー』

「…なん??」


今は無理やろうケドいつか私のこと好きになってな??そう覗き込みながら笑むやまだが何よりも可愛いくて、心臓の鼓動が今までで一番早くなった気がした。






不覚ながらに惚れました
(好きとは言い切れんケド、他の男には渡したないって心から思うた)


20100726

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