可愛さ大発見 いくら剥がそうとしても頑なに外れない彼の腕をつけたまま、俺と人魚先輩は屋上でまた川の字で並んでいた。
はがす方法なら、簡単にあったのだけれど(先輩の耳元で歌を歌う、とか)。まあ、それは少し可哀想な気もしないでもないので、このまま放っておくことにした。
・・・ただ、この時期だし。暑苦しくて困ってるのは、ホント。
「今更だが双見。サボリとはけしからんな」 『あんたには言われたくないよ』
すごく真面目に言ってくるその人に、俺も割と真面目な風に返してみた。
「俺は良いんだ」 『なんで?』 「・・・」 『理由。ないんじゃない』
困ったように黙ってしまった先輩が、少しだけ可愛く見えて、微笑んだ。
「へえ。笑った顔も、良いな」
・・・こんの天然タラシが。 いつスイッチが入るか分からないから、タチが悪い。本当に。
『・・知らないよ』
うっすらと染まった顔を気づかれないようにぶっきらぼうに返して、隣で寝てる眠り先輩に目を向けた。
・・なーんか幸せそうな寝顔。
「どうしてこっちを見ないんだ?」 『別に、何でもない』
眠り姫に目を向けたまま、人魚先輩の質問に答えた。 その間も、赤い顔を直しながら、眠り姫の顔を観察する。 わー、やっぱりまつ毛長ーい。やっぱり顔キレイだよねー
「双見」
名前を呼ばれて、腕が掴まれた。 反射的に、そちらの方を向くと、真剣な顔をした先輩がいる。
「あまりそちらばかり見るな」
言って、少しだけ赤く染まる先輩の顔。 あれ、なんか、ちょっと。可愛い、かも。
「・・・少々妬いてしまう」 『あははっ』
少し拗ねたように言う先輩は、やっぱりちょっとだけ可愛い。 普段、そんな姿なんて見たことないから、そのギャップが面白くてついつい笑ってしまった。
「・・なんだ?」 『何でもないよー』
意味が分からない、というように首をかしげる先輩に
『これからは先輩のこと、ちゃんと見てあげるから、ね?』
ニッコリと、微笑めば
「・・・お前、」
さらに、赤くなる顔が、やっぱりちょっと可愛かった。 そんな新しい発見をした、ある日の屋上―――
end
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