眠いなら寝なさい

「こーらー!そこふたりで良い雰囲気作んないー」

『わっ』

拗ねたような声をあげながら、突然抱きついてくるから、当然びっくりして

『もう、なに?』
「央志くん冷たいよー」

さりげなく、自分の変な声が出ない内に、腰の位置にくる腕を外そうとしたけれど全然外れなくて。
それどころかぎゅっと、手に力が入った。

「俺のこと、放っておかないで?」

『え、?』

後ろからつぶやかれる声。
それは、この人から聞いたことないような、甘い声で。

『っ・・!』

それがちょうど、耳に息がかかって。
ぞわ、ってなって――

やっぱり、顔が赤く染まっていく。

もう、ここに来てからこんなのばっかりだ。
なんで、姫たちに俺、こんなやられっぱなしなんだろー

白雪にも、親指にも、シンデレラだって。
・・・なんなんだ、もう。

「ねーえ?」
『っ!、な、なに?』

ふーって、耳息を吹きかけてくるこの姫。


「だーれのこと、考えてるの?」
『べ、別に誰のことも』
「嘘」

呟いて、もう一度耳に息を吹きかける。

『そ、っれやめてよ!』

必死に手を外そうとしながら、後ろにいる彼に言ってみた。

「耳も弱いんだー?」

弱点ばっかりだね?、なんて笑いながら言ってくる。

『弱点じゃ、ないっ!』

なんなの、この人。いつものちゃらんぽらんな雰囲気と、なんか違う気がする。
それにこの人、照れ屋って話じゃなかった?
全然そんな素振りないんだけど?

「強がっちゃってー、もう可愛いんだからー」

ニッコリ笑っているのが、顔を見なくても分かる。
ほんと、腹立つこいつ。・・先輩だけど

『ほんと、いい加減に・・・!』
――「夢路」

俺の言葉を遮ってヤツの名前を呼んだのは、さっきまで黙っていた人魚先輩だ。
・・そういえば、なんで助けてくれなかったのこの人

「眠いなら寝たらどうだ」

何言ってるの人魚先輩。この状況で眠い、なんてアホじゃないの?
いくらなんでも、あの眠り先輩といえどそこまでアホじゃないでしょ?さすがに

「うんーそうするー」

・・・どうやらこの人は思っていた以上のアホだったらしい。

「おやすみー」なんて言いながら、俺に寄りかかったまま寝てしまった。・・正直重いんだけど


両足で踏ん張りながら、人魚先輩に助けを求めると

「こいつはよく寝るんだ」

なんて、よくわからないことを真顔で返された。

まぁ、眠り姫――とかいう名前のお姫様ならわからなくもないけれど。









[ 42/46 ]

index


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -