天然タラシ注意警報

なに、この体勢。
手痛いし、なんか近いし。

幸いなことに、まだ顔は赤くなってないからきっと。今のうちに――

「へえ、いいものだな。こういうのも」
『へ?』

思いがけず下からこぼされた呟きに、そのまま下に視線を落としてしまった。

『・・・っ!』

近い!近い!思ったよりも近かった。
赤くなってなかったはずの顔も一気に染まっていくのがわかる。


「お前を下から眺める経験などないからな」

先輩はどうやらそんな状態の俺には、まだ気づいてないらしい。
ようし、ようし。今のうちだ。

『そ、そうですねー。じゃ、もう』
「――まだだ」

いいでしょ、ってつづけようとした言葉は先輩の声によって遮られた。

「まだ、堪能したい」
『堪能、って・・』

意味分かんない、この天然タラシめ!
今なら、眠り先輩たちが言ってた意味が分かる。これはタチ悪い。

白雪なり親指なり、彼らのヤツはまだおふざけだから、なんとかなる気もしないでもないんだけど。

先輩のは、本人も自覚してないから、困る。すごく困る。
先輩の知らないところで赤くなっちゃってる、なんて恥ずかしいじゃん、なんか。

「いいだろう?」
『い、良いわけないでしょ・・!』
「ん?どうして顔が赤いんだ?」

ぜ、全然話変わったんだけど

『気のせい』

「そうか?熱でもあるんじゃないのか?」

なんで無駄にそこで心配しちゃうかなー

そんなことを言いながら、相変わらず俺の下から手を伸ばしてくる。
その手はおでこに一直線。

どうやら本気で心配しているようで、熱を測ってくれてるらしい。

『ほら、ないでしょ?』

「手だとよく分からんな。ちょっと降りてこい」

『はぁ?』

降りてこいって何?意味が分からない。
ていうか、そろそろ腕痛いんだけど

「でこが当てられないだろうが。早く、来い」

『来い、っていうか。腕、そろそろ限界・・』

「あぁ、それなら俺に乗ったらいいだろ」

――グイッ

『ば、馬鹿!』

もう意味分かんない。意味わかんないよ、この人!

急に引っ張られたのと、もう腕が限界にきていたのとか、色々あって我慢とか出来なくて

「これだと測り安いな」
『・・・っ!』

引っ張られたことで右側に体重が寄って、右腕だけがおれて地面に肘をついた。
そのことで、一段と近くなる顔。それはもう、口とか、触れちゃうくらいに――


「ん?さっきより赤いな?やっぱり熱が」
『だから、それはっ!』

この天然タラシを、どうにかしないと!
なおも、おでこを近づけようとする先輩に何か言い返そう、とした時――









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