優しいんだよねやっぱり

「央志」

再度呼びながら、近づけられる顔。

『め、ぐみ・・』

ここが学校の廊下だとか。普通の休み時間だとか。そんなこと考えてる暇はなくて。

「言わねーと、このままだ」

『近い、ってば・・!』

耳元で囁かれれば、こちらも不可抗力で頬が染まって。ゾワっして。

「早く、言えって」
『・・・っ!』

どうしてか、無駄にゆっくり言うから、余計にゾワゾワして。

「・・・いいのか?」

『っ!・・だめだ、ってば!』

近い肩をぐいっと押すけど、やっぱり動いてくれない。


「言え」

もう、無理!もとから仁に勝てるわけなかったんだ。わかってた。

『わかった、から・・!』

「・・何があったんだよ」

言ったのに、そのままの状態から変わらない。

「言わねーとこのままだって」

『・・・シンデレラ、に――――』



*



「ふーん」

やっと、離してもらえた。全部説明するまで開放されなくて、さっきやっとだ本当に。

「それで他の奴らよりも意識してんのか」
『だって、』

他の奴らのは、もう慣れつつあるけど。あれは、あんなのは、初めてだし。

「ま、無理ねーな」

さすが、わかってるねー、仁くん。

「じゃあ――」
『・・え?』

――チュッ

軽いリップ音。頬に軽い感触。
目の前にいる仁の顔は、心なしかうっすら赤く染まっていて。

『な、何・・?』
「これで、いいだろ」

な、なにが?

「俺もやってやったんだから、アイツのも無しだ」

あ、そういう、ことか。

やっと意味が分かってにこり、と微笑む。

優しいなぁ、仁は。自分でやっといて、赤くなっちゃってさ。
優しいし、かわいいし。本当、いい奴。


『仁、ありがと』

「・・おう」

やっぱり優男だった仁のおかげ?で
これからの学校生活も。セクハラしまくってくる姫たちとも。
なんとか、なんとか、付き合っていけそうな気がする、今日このごろ





end






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