俺の(省略)鬼ごっこ
『お、おっお前!』
「あはははっ真っ赤ー!」
楽しそうに笑って、木梨はフェリーに乗り込んでいった。
『くっそ…あのやろ』
赤く火照った頬を腕で隠すようにして。
「なんで、一瀬ばっかり…!」
『あ?』
「ミキちゃんがチューしたとこにチューさせろ!!」
『はぁぁぁあ!?』
「一瀬ーーー!!」
『てめっまじ来んな!花井ー助けろよ!!』
「もうどうにでもなれー!」とか言いながら追っかけてくる牧は、まじで怖かった。
それから逃げ惑う俺とそれを追いかける牧に花井の、(俺の何か大切なものをかけた)鬼ごっこが始まったのだった。
*
やっと。あいつらをまいて教室に着く。
その頃にはもう息切れ半端じゃなくて。
『はぁっはぁ…!』
「朝から全力疾走って、大丈夫かよ」
毎度のことながら爽やかに笑う神木。
『大丈夫じゃ、ねーけど。俺の大切なナニかをかけてんだ…!』
「ははっ何だそれ」
「あ、いた!一瀬!」
やっべ。もう来やがった。
「おい聞け、1の2諸君!そこにいる一瀬颯天は3Dの女の子にほっぺにチューされたぞ!」
「「なぁぁあにぃぃい!?」」
『牧の馬鹿野郎!んなこといってんじゃねーよ!!』
「一瀬ーーー!!」
『ひっ!』
怖い怖い怖いってまじで。
女に飢えすぎて今ならアッチへの扉も越えられそうな目してるってまじで!
「そのほっぺにチューさせろぉぉお!」
「なら俺はその唇をもらってやるー!」
「今言ったの誰だ!…俺もそうしてやるー!」
『てめーらまじで来んなぁぁあ!!』
牧+1の2のほぼ全員となった俺の大切なナニ(省略)鬼ごっこは、今日のほぼ1日を費やしたのだった。
どうやら俺に安息の日はないらしい…
end
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