お別れの
その日の夜。花井と和解したらしい木梨は、清々しい顔をして俺の部屋にきた。
『花井んとこ行けば?』
「颯天くんのとこにいたかったんだもん!」
とか言ってさ。
それ断れる男がいたらちょっとつれてきてみろ。
さすがにガールズトークはせずにその日の夜は早々に眠りについた。
*
そして次の日の朝。
早朝のフェリーで木梨を返すらしいから、俺も一応見送りにいくことになった。
「本当牧くんと颯天くんにはお世話になっちゃったね」
「…大丈夫だよ」
『いいって』
なんかさっき牧と木梨がふたりでコソコソやってんなーと思ってたら、牧が落胆しながら帰ってきた。
たぶんメアドとか聞いて断られたんじゃねーかな。
…思いっきり爆笑してやったけどな。
「…じゃあ行くね。本当にありがとう」
なんか今度は花井と話してたみたいだがそれも終わって、フェリーに乗り込むとこ。
『木梨』
「ん?」
『餞別』
ほら、とあるモノを彼女に向かって投げた。
「え、これっ」
『気に入ったんだろ?受け取っとけ』
木梨に渡したのは彼女と睡眠を共にしたタヌキみてーなヌイグルミ。
気に入った様子なのはなんとなく分かったから、(たぶん姉貴のだけど)あげよーと思った。
「うん…!ありがとっこれ、お礼」
―チュッ
そう言って近づいてくる彼女の唇が俺の頬に。
いつぞやのソレとは違った本物の女のコのソレは、本当に女のコだった(自分でも何言ってっかわかんねー)。
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