彼女の逃亡

『終わったー』

授業も全て終わり、脱力して机に身を投げ出す。

「お疲れ」

『ん。お疲れ。神木はもう部活か』

「そーそ。俺らはふたり寂しく帰ろうかね」

『寮までの道のりだけどな』

笑って、カバンに諸々をつめていると、花井の姿が見えないことに気づいた。


『あれ。花井は?』

「んー?そういやいないね」

『木梨んとこか』

「あー。いいよなー彼女持ちはよおー」

『へいへい。ま、出来るってそのうち』

項垂れる牧を適当に慰めながら、俺たちは寮へと向かった。



*


「…ミキはいいコだ。わかるだろ?」

『あれ』

「花ちゃんの声?」

とりあえず俺の部屋で木梨と戯れてくことになったからこっちに来たけど。

花井。いねーと思ったらやっぱ女んとこかよ。


「…花井君は?あたしのこと心配してんの?」

木梨の声までバッチリ聞こえるし。
つーか。もうちょい音量下げてもらわねーと怒られんの(たぶん)俺なんだよなー。


『ちょっと言ってくるわ』

「あいよ」

言って、部屋に進んだ時。


「嘘。だったらなぜあたしが家出したか聞こうともしないの?」

――バンッ

ドアが勢いよくあいて、思わずぶつかりそうになった。

『っぶねー…』

「とっ」

「ちょっと待ちなさいって」

ん。今出てったのもしかして木梨?






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