さよなら椿くん

「あ、ありがと」
『ん』

あれから近くのコンビニへ行って、消毒液とかいろいろ買ってきて。
椿の傷の手当にあたってた。

「あんたさ」
『あ?』
「なんであんな強いんだよ」

なんでって言われてもな。
家が極道だ、とは言えねーだろ。

『小さい頃から、オヤジたちに鍛えられてたからじゃね?』
「ふぅん…」

なんだよ、不満そうじゃん。

『おっしゃ、出来た。これでいいだろ』
「…なぁ」
『あ?』
「名前は?」

『一瀬颯天』
「颯天…」

なんで復唱だよ。

『じゃ、俺人待たせてっから』
「は!?」
『もう喧嘩すんなよー』
「あ、おい!」
『なんだよ』
「お前、どこ中」

中って、てめぇ。

『栖・鳳・高・校!!』

めっちゃ強調して言ってやった。

「栖鳳、ってマジかよ…」
『なに受けようと思ってんの?』
「今、決めた」

この時期に高校決めるって、なんだそれ。

『ふーん、まぁいいや。頑張れよ、後輩』

少し可能性は低いかもだけど。
努力はしとけ、ってな。

ニッコリ笑顔で、少し!上にある頭を、いつも神木とか新にやられてるみたいにわしゃわしゃ撫でる。

「…あんだよ」
『いや、なでたくなったからさ』

またちょっと笑って。

『じゃあな!あ、これやる』
「なんだ、これ」

新のために買ったやつだけど。
また別のとこで、お茶なりなんなり買えばいいか。

それを渡して、背を向けて、走り出した。

「…颯天、か」

あげた飲み物を片手にもちながら、俺の名前を意味深に呟く椿にまた会うことになるのは、またちょっと先の話。



(椿に道を聞くことを忘れて、さまよってるとこを牧たちに見つかって)
(みんなに怒られたのは言うまでもない)




→あとがき

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テーマ「人外ファンタジー」
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