男の娘が怒るよ?

「うっさい!出てくわよ!」

叫んで、女の子がひとり出てきた。

可哀想だと思うよ?君も。
けど、俺は牧や他の奴らのが大事なんだよな。

『ねぇねぇ』
「なに!?」

走って帰ろうとする女の子を呼び止めて、ニッコリ笑顔で

『君より、俺の方が可愛いくない?』
「は、はぁ!?」
『男の俺に負けるなんて、かわいそ』
「う、うっさいわね!」
『それとね?』
「な、何よ?」
『俺の友達のこと軽々しく話すんじゃねぇ。次は、キレんぞ』

そこまで、言うと。
泣きそうな顔してその子は走り去っていった。

「怖」
「怖ぇ」

神木と新が、可哀想に、と呟きながら俺の頭に手を置く。

『なんだよ』
「いや、良くやったよ」
「あぁ、俺らの分まで言ってもらった感じだな」

撫でながら言うな、お前ら。
…ちょっと気持ち良いじゃねーか。

『友達の悪口とか、嫌いなんだよ。それだけ』
「かっこいいな、一瀬」
『うっせ』

なんかくさいことを言ったような気がして、赤く染まる顔を隠した。
ハズいな俺。こんな格好して、何言ってんだか。

『もう部屋戻る』
「牧んとこは?」

牧にだけこの格好見せてないって意味だろうけど。
もう飽きた。なんか、疲れたし。はよ着替えたい。

『いい』

「じゃ、俺も戻るわ」

そこで神木と別れ、新と部屋まで向かう。


「お前の部屋で寝かせろ」
『えー。なんで』
「ベット空いてんだろ」
『空いてっけどさ』

決まり、と勝手に決めて、新はずんずん進んでいく。

『んじゃジュース1本』
「金とんのかよ」
『当たり前だろ』
「気が向いたらな」

なんて、俺達がそんなアホな会話している中。
牧たちがシリアスな空気になっている、なんて知るはずもない。

"エリカ"について、俺が知るのは、もう少し先の話。



end




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