嵐とお別れ

「じゃあね、颯天」
「風邪と悪い男には気をつけるのよ」
「私たちが帰っても泣かないのよ?」

『泣かねーし、分かったから早く帰れよ!』

「まあまあ、一瀬」

さっさとフェリーに乗れ、と催促する俺を宥(なだ)める神木。

あれから荷物を神木に半分持ってもらい乗り場まで運んだけれど。
わかってた、わかってたけど。

姉貴たちの目が獣と化してた。
すっげー怖いんだそれが。

神木はご自慢の爽やかスマイルで振り切ってたけどな。


「うちの弟をよろしくね」

匠美姉ちゃんが、牧になんか言ってる。
よく分かんねーけど、すげー仲良くなってね?あいつら。

どうでもいいけど。

「じゃあね、颯天」
『おう、さっさと帰れよ』

しっし、と手を振る。

『じゃあな』

最後までなんだかんだ言っていたけど、やっとフェリーに乗り込み、あいつらは帰った。


「すげえ、お姉さんたちだったな」
『…だろ?』

意味深に笑う神木にチカラなく笑う。
はー、疲れた。

「けど、いいお姉さんだね」

ニッコリ笑う牧。

『まあ、それは、うん。そうなのか、ね』

いいやつらだ、と思う。うっせーけど。

なんだかんだ。
今日来たのだって心配してたんだろうと思う。うっせーけど。

『ま、いいじゃん。帰ろうぜ』

そうして、嵐の休日は、なんとか終わりを告げたのだった。




→あとがき

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テーマ「人外ファンタジー」
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