荷物持ちと合流

くっそ、ボケ姉貴が。
なんで俺がひとりであいつらの荷物運ばなきゃなんねーんだよ!

『あー、っくそ』

ひとり悪態をつきつつ、山田さん宅へと向かっている。
と、浜辺の塀のところに、見慣れたヤローがひとり。


『神木』
「あれ?なんでこんなとこにいるんだ?」
『それはこっちの台詞だ、お前こそ何やってんだよ』

たしかこいつは、今日姉さんをフェリーまで送りに行ったはずで。
ここにその人がいないってことは、もう乗った後なんだろう。

「海、見てた」
『黄昏てんなよ、ばーか』
「黄昏てねーよ」

ははっ、と笑うけど。
どこか寂しそうで。どこか悲しそうで。


『泣きたいなら泣いてもいいんだぞ』
「…なかねーよ」
『意地っ張りが。ほら俺の胸貸してやるよ』
「ヤローの胸なんかいらねー」

こんにゃろ。

「わりーな、大丈夫だ。もうだいぶ整理ついたし」
『ふーん、ならいいけどよ』

嘘か。ホントか。

「で。一瀬はどこ行くんだ?」
『山田さん宅』
「は?」

意味が分からない、と言った様子で首をかしげる。
あ、そうだ。荷物持ちしてもらえばいいんじゃね、神木に。
やっべ、あったまいい、俺。

『よしよし決まりだな』
「は?」
『なんでもねー、行こうぜ。山田さん宅』
「ま、別にいいけど」
『おっし、さすが神木くん。いいとこにいたー』
「ははっ、なんだそれ」

とか言ってみたけど。
気の利いたこと、とか言ってあげられないから。

気分転換にでもなればいい。
少しでも楽になれればいい。

そんなことを考えながら、俺達は山田さん宅に向かって歩き出していた。






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