牧side
「「「あーっ楽しかった!」」」
『…そりゃ良かったよ』
笑顔で言うお姉さん方に対して
一瀬は心底疲れたように返事をする。
お姉さんたち3人はみんな美人で。
これは一瀬があんなに女顔になる理由も分かる気がした。
そして、彼女たちは相当弟が大好きらしい。
わがままがすごい。弟に対してだけ、だけど。
わー、また、言ってる…
「ねえ、山田さんの家に私たちの荷物とってきて?」
「そんなに重くないから大丈夫よ」
「よろしくね!」
『はぁ!?自分で取ってこいよ!そんなの!』
必死に怒る一瀬だけれど、お姉さんたちは全く聞いていない。
「さ、じゃあ私たちはフェリー乗り場で待ってましょ」
「行きましょ」
「行ってらっしゃい、颯天」
そして俺達3人の腕をそれぞれ引っ張りながら、歩き出した。
『あーっくそ!!』
もうこれ以上何を言っても無理だと感じたのか、文句を飛ばしながら一瀬は山田さん宅に向かっていった。
自然と1対1で話す形になり、俺は匠美さん、と。
『匠美さん、本当に颯天のこと好きですね』
「あら、分かる?」
ニッコリと笑う。
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