『雨ってキレイ』
「は?」

いきなり何を言い出すの

『雨ってキレイじゃない?』

今までも度々不可思議なことを言い出す彼女だったけれど。

雨がキレイ、だなんて
聞いたこともないし、考えたこともない。


『だって連れていってくれそうじゃない?』
「どこに」

んー、と考える素振りを見せて。

『…キレイなとこ?』


いつも以上に意味が分からない。

やはり不可能だ、彼女の全てを理解するなんて。
…理解しようとも思ってないけれど。


「奇妙なこと言ってないで、手を動かしなよ」

そうだ、今は放課後で。

風紀委員である彼女(無理矢理入れた)と資料の整理をしていたんだっけ。

その時降りだした雨。
それを見た彼女が突然にあんなことを言い出した。


『うーん』と曖昧な返事をしながらも、目線は未だに窓の外。


『行きたいなぁ、キレイなとこ』

ふと囁かれた声に思わず腕をとった。

『え?』
「僕から離れるなんて、許さない」

君がいないなんて。
君に会えないなんて。


『…行かないよ』

初めは驚いた顔をして
次には微笑んで

『恭弥の側から、離れるわけないでしょ』
「…ふん」

急に恥ずかしくなった。
僕は何を言っているの


けれど、同時に彼女の言葉で胸の中が温かくなったのも事実で。

あぁ、やっぱり僕は君が好きかもしれない。

何を犠牲にしても
君だけは

僕から離れないで
どこにも行かないで

―――律






END

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