電柱に話しかけるのは
朝起きて、制服に袖を通し、その他諸々を終えてマンションを出た。
私は転入生らしいので、挨拶に行かなくちゃいけないから、時間を踏まえて少し早め。
『行ってきます』
当たり前だけどその呟きに帰ってくる声はない。
やっぱり寂しい、かも
なんて思いながら学校への道を歩いた。
*
「…お前捨てられちゃったのか?」
『…?』
壁っていうか電柱に話しかけてる人がいる。
…なにやってるの、この人?
『…?』
少し警戒しながら近づくと、その人と壁の間には段ボールに入れられた猫がいた。
『猫?』
「うわわっ!…ビックリしたぁ」
膝を折って後ろから覗いた私に心底驚いたようで、変な声をあげて仰け反る、その顔には見覚えがあった。
(『サワダ、ツナヨシ…!』)
ボンゴレのボス
討伐命令、の…
その姿はやっぱり弱そうで、貧相で。
「うわぁ…」
『…?』
ふと思考を止めると、サワダが何か呟きながらこっちを見ている。
顔を見据えられて意味が分からなくて、黙って見つめ返せば。
「あ、ごめん!き、綺麗な人だなぁ、と思って…」
「って何いってるんだ俺!?」と、ひとりでサワダは慌て出す。
よく分からない、雲雀とはまた違った意味で。
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