日本に着いたのは、真夜中だった。
あの後すぐに準備をして(カズキやヒビキには会わないように頑張った)、オウディの専用ジェットに乗って、日本に着いたら着いたで、待っていたエトーの部下の人に車に乗せられて。
「遠いから眠っていていい」なんて言われたけど、よく知らない人の前で眠るなんて出来ないし、眠らないのには慣れてるからと断った。
車に揺られる間、エトーに渡された資料に目を通していた。
最低限、名前くらいは覚えておこうと思った(名前を覚えるのが一番苦手なんだけどね)。
大空―サワダツナヨシ
雨―ヤマモトタケシ
嵐―ゴクデラハヤト
霧―ロクドウムクロ
(クロームドクロ?)
雲―ヒバリキョウヤ
『…ヒバリキョウヤ?』
この名前、どこかで
聞き覚えのある名前に呟いてみる。
その時ふと、写真のことを思い出した。
いつも身に付けているそれは、謂わば私のお守りみたいなもので。
幼い頃の記憶がない私だけど、自分の名前とその写真のことだけは覚えていた。
その写真を見るとひどく心が落ち着いて、懐かしい気持ちになったからどこに行くにも持ち歩いていたものだ。
そこには(たぶん)男の子が笑顔で写っている。
その人が誰でどこに住んでいるのか、なんて覚えていないけど。
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