『別に…ただの顔見知りです』
それ以上でもそれ以下でもない。
私の答えに納得はしていないようだったけど、時間が押していることに気づいた先生のひとりの言葉で、私たちは教室に向かうことになった。
*
先生と一緒に教室に入ると向けられる好奇の目
…居心地のいいものじゃない。
『…日下リリィです
長い間海外暮らしだったので、あまり勉強は得意じゃないですが、頑張ります。』
最後に『よろしく』とつけ足し、頭を下げる。
拍手を貰えたから、一応は受け入れて貰えたみたい。
『あ』
沢田を見つけた
…同じクラスだったんだ
沢田と私の視線がぶつかると彼は遠慮がちに手を振ってきて。
私もそれに返すように手を振れば、なぜか周りにいる他の男子が手を振る。
対処に困って結局視線を反らした。
「じゃあ席はー、山本!
…また寝てんのか?おい山本!」
先生が呼んでいるらしい山本の前の席の人が、彼を起こすように揺らす。
けど、彼は起きなくて。
「はぁ…
とりあえずアレの隣に座ってくれ」
『…はい』
疲れたように溜め息を吐く先生に素直に従って。
彼の隣の空席に腰を下ろした。相変わらず起きる様子のない隣人を見ながら
『…教科書、どうしよ』
人知れず呟いた。
この時私は、彼がボンゴレの守護者――ヤマモトタケシであるなんて、少しも考えていなかった。
END
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