ひとりはだめ
「あれ、君並高?」
ふと私の制服に目が行った彼は、不思議そうに尋ねる。
『…うん。転入生』
「なるほど!通りで見たことないと思った」
サワダはニッコリ笑う。
それから少し目線をずらすと、彼の足下で段ボールに入った子猫を見つけた。
『…猫』
「あ、うんそう。捨てられちゃったみたいで…」
『可哀想…』
捨てられるなんて、かなしすぎる…
ひとりなんて、寂しすぎるよ……。
「飼ってあげたいんだけど、ウチはもう色々と多すぎて…」
色々って何だろ?
『私、飼うよ』
ひとりの寂しさも悲しさも、どっちも分かるから。
「本当!?良かったぁ」
ホッとしたように言う彼は、やっぱりマフィアのボスには見えなかった。
だから、討伐はもう少し待とう
いつでも倒せるし、ね。
「俺は沢田綱吉、えっと…」
『日下リリィ』
名前知ってるよ、とは言わなかった。
「そっか…リリィちゃん。よろしくね!」
その返事にニッコリ微笑んで、段ボールの中の猫を抱き抱える。
その小さい体はやっぱり軽かった。
「え、この子どうするの?」
『…持ってく』
だって、このままにしておけないし。
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