「それで、報告は?」
急に真剣な声になったから私も仕事に切り替える。
『…雲と接触した』
「…雲雀恭弥か!?」
カズキも知ってるんだ
雲雀のこと。
『…手合わせ、した』
少し間を置いて
勝てなかったことも告げて、怒られるかと思ったけどカズキは心底ホッとしたように息をはいた。
「怪我はないんだろ?」
『…ない、けど』
勝てなかった、と呟く。
「勝ち負けはいいんだ
お前の任務はサワダの討伐だろう?」
そうだけど
「これ以上アイツには関わるな。アイツの実力こそ計り知れないものだ。そこらのマフィアなら束になっても敵わないだろう」
『…けど』
(「またね」)
雲雀の言葉が頭に響く
「けど?」
『…なんでもない』
「…そうか」
これは私たちだけの秘密
秘密は誰かに話したら
秘密じゃなくなっちゃう
そうしたらまた会えない
…会いたいの?
……馬鹿みたい
彼は敵なんだから。
オウディの敵なのよ。
自分に言い聞かせるように言って、途端に虚しくなった。
『…じゃあね、カズキ』
「あぁ。何かあったらいつでも連絡しろ」
小さく返事をして、通話を切った。
『…雲雀、恭弥』
小さく呟いた声は闇に消えて、それに反応するように胸が小さく鳴った。
これ、何?
こんなの、知らない――
END
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