さよならじゃなくて

「あの身のこなし、ただの転校生じゃないね?」

『…そんなこと言ったらアナタもでしょう』

思わず返すと、また楽しそうに笑う彼。

正直にマフィアだ、って言えば良かったんだろうか。


「まあね
けど僕は君が何者かなんて関係ない」

『…?』

よく分からない人だ
心が読めない。


「ただ、君に興味を持った。それだけだよ、分かった?」

高い身長なのにわざわざ腰を折るようにして、顔を覗き込んでくるから。

『…あ』

顔に熱が集まって
思わず顔を背けた。

だってそんなことしてくるの、カズキとかヒビキ以外いないんだもん。


「ふーん」

呟いて、雲雀は身体を起こして、今度は私の頭を優しく撫でる。

『…?』

いっそう意味が分からなくて、自分よりいくつも上にある顔を見上げた。


「君を見てると、頭を撫でたくなる」

「どうして?」なんて、私に聞かれても困る。

自分の頭の感触なんて分からないもの。



「そろそろ生徒が登校してくるね」

『…帰らなきゃ』

雲雀の声で我に帰り、登校は明日からだったことを思い出す。

「…そう
またね、リリィ」

『…またね?』

「また会うんだから、またねだよ」

『また、会うの?』

「会うよ」

即答されて、少し驚いた
けど不思議と嫌な気はしなくて。


『うん。
またね、雲雀』

雲雀に手を振って別れを告げて、屋上をあとにした。








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