「よお、」

「よお、じゃねーよバカ」



時刻は深夜0時を過ぎた。なんでこんな時間に高杉はわたしの家の前にいるんだ。もう寝る気まんまんのわたしの元に届いたメールは「外に出ろ」とだけ書いてあった。大人しく出てみればこの様だ。高杉はずっと黙っている。しかもなんだか表情は硬い。なに?わたしのスッピンそんなに酷い?



「何の用なの?」



無言のまま時間だけが過ぎる。ってかもう家入っていいかな?わたしもう寝たいんだよね。明日朝からバイトなんだよね。



「……お前に話がある」



高杉のその言葉にズキンと胸は痛くなった。同時に夕方の会話を思い出す。きっと高杉は高杉なりに考えてわたしをフリにきたんだ。わかります。やっぱり不安でもあんなこと言わなきゃよかったと後悔した。でももう遅い。どんなに後悔したって時間は巻き戻らないし、過去をなかったことになんて出来ないのだ。大人しく高杉の言葉を待つ。



「俺は、」



じりじりと近く高杉。そういえば真っ正面から高杉のこと見るの告白した日以来かも。相変わらず顔は真っ赤で目は泳いでて。あー、やっぱりわたし高杉のことが好き。バカでもアホでもヘタレでもキモくても初でも高杉が好き。もうなんでもいいよ。どんなに不安になったって、アンタの隣がわたしの定位置なの。わたしは高杉が好きなんだよ。フラれたくないよ。言わないで、ねぇ。続きはもう言わないで。言わないで言わないで言わないで言わないで言わないで!そんなことを思って体を強張らせて。ギュッと堅く目を瞑って。次の瞬間わたしは時間が止まったかのようにすら思えた。



「お前が好きだよ」



自分が高杉の腕の中にいることに気付くまでに大分時間を要した。ゆっくりとゆっくりと強くなる腕の力にわたしの心臓はむず痒くてくすぐったくて仕方なかった。初めて聞いた高杉の心音はドキドキでもバクバクでもなくて、言葉には出来ないけどただただ早く動いていた。



「アンタ、それだけいいにわざわざ来たの?」

「………悪ィか」

「バカ、嬉しいんだよ」



高杉の笑顔は下手くそ過ぎた。笑ってるって言うよりこりゃただの引き笑いだ。でも高杉も嬉しいんだっいうのはわたしにもちゃんと伝わった。



「好きだよ、高杉。大好き」

「わァってるよ」



ねぇ高杉。わたしたち、いつまでも一緒にいれたらいいね。だって恋するアンタにはわたししかいないし、恋するわたしにはアンタ以外有り得ないんだもん。



「お前、顔真っ赤だぞ」

「うるせーよ、高杉に言われたくないわ」



二人で顔を真っ赤にして、指を絡めて笑い合って。ああ、あの日と一緒。けど想いは相変わらず募る一方だ。アンタはどう?なんてそんな真っ赤な顔見りゃ聞かなくてもわかるわバーカ。



高杉はわたしに。わたしは高杉に。きっと、何度も何度も恋をするんだ。