高杉は絶対に真正面からわたしを見ない。だからわたしも最近真正面から高杉を見ていない。最初はなんだかもの足りなかった。だって高杉の左側に立ってしまったら奴の顔の半分は前髪と眼帯で隠れやがるんだぜ?やってられっかっつーんだよ!それでも最近は高杉の隣がわたしの定位置になりつつあって、こんな風に高杉の顔を横からでもまじまじと見れるのはわたしだけなんだなって思う度に胸は躍った。思わず笑いも零れるってもんだ。



「うヘ、へへへひゃふぁははは」

「…もっとまともに笑えねーのか」



そんなわたしを見ては高杉は気持ち悪がる。確かに今の笑い方はちょっとキモかったかもしれない。認めるよ。ああ、認める。だけどテメーが言えることじゃねーんだよ。お前コレの一個前の話読め。お前一発目から「運命ってほんとにあんのか?」って言ってんだぞ。高杉、お前のがわたしよりよっぽどキモいわ。んなこと言いつつもやっぱりわたしは高杉が好きだ。例えキモくても、初でも高杉のことが好きだ。



「…高杉、前から言いたかったんだけど一個いい?」

「なんだよ改まりやがって」

「いや、何となく」



しかし。付き合ってから一ヶ月の時間が流れて、その間何回も繰り返した二文字の言葉は果してちゃんと高杉に届いてるのだろうか?こうやって毎日くだらない会話してお互いに散々貶し合って。楽しいよ。毎日まじで楽しい。だけどこんなわたしと高杉だから不安になる。



「んだよ、早く言え」

「……わたしまだアンタに一回も好きって言って貰ってない」

「………」



おい、高杉。なんでそこで無言になんだよ。この際ついでに言わしてもらえば、付き合って一ヶ月。高杉に抱きしめられたこともなければキスしたこともない。辛うじて手繋いだくらい。高杉が超超超初なのはちゃんとわかってるけどね。わたしだって女の子だもん。本当はぎゅーってしてもらいたいし「好き」って言ってもらいたい。じゃないと高杉がほんとにわたしのこと好きなのかわかんないもん。さすがのわたしもちょっと不安だよ。高杉、どーしてくれるんだ。



「高杉、」

「………」

「…帰ろっか」



結局、その日はそれ以上話さず家に帰った。