08








すると

恭ちゃんは寂しそうに口を開いた。


「何で泣いてたんだよ……」


「あっそれは、さっき転んじゃって…

少し涙が出ただけだよ」




「嘘つけ。お前は小さい頃から

嘘をつくのが下手なんだよ」




すると、恭ちゃんは、

あたしを強く抱きしめた。




「ちょっ恭ちゃん!?」



恭ちゃんの胸を叩いていても

びくともしない。


「恭ちゃん……苦しい」



恭ちゃんは、さっきよりも

あたしをぎゅっと抱きしめる。




どうしたの……恭ちゃん?



すると、恭ちゃんは口を開いた。



「もう少し、このままでいさせて」


「えっ?」



どうしたんだろう……。


何かあったのかな?











恭ちゃんは、

抱きしめていた力を弱めると



「俺…お前の泣いているの見ると、

止まらなくなる…」



恭ちゃんが小さい声で呟いた。



「俺は、……結菜を泣かせない」



そう言って、

あたしから離れた。




なんて言ったらいいか

分からなくて黙っていた。




「じゃあな」



恭ちゃんは、

コツンとあたしのおでこを



指でつつきにそう言って、

先に帰って行った。





あたしは、しばらくここで

放心状態のまま立っていた。





“俺は、……結菜を泣かせない”

の意味がわからない。




今日は、色々ありすぎて

あたしの頭では理解できなかった。










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