06
「仁菜ちゃんって俺のこと知ってる?」
「知ってますよ!先輩、有名ですもん」
実は、つい最近知ったんだけどね…。
「じゃあ、俺の名前知ってる?」
「えっ?」
先輩の名前?
わ、わからない…。
というより、聞いたことない。
だって皆、『王子』とか『先輩』とかしか言わないから。
すると、先輩は、爽やかに微笑みながら口を開く。
「その反応からしたら、俺の名前わかんないだよね?」
「はい……すいません!!」
ホント、失礼なことしちゃった。
あたしは、深く頭を下げた。
「そ、そんな謝ることじゃないから…、それより顔上げて?」
そう優しくあたしに声をかけられ、顔を上げた。
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