例えばふとした横顔とか、照れた顔とか、わたしを見つめる真っ直ぐな瞳とか、食べ物を頬張る姿は少しはしたないけれど、食べ終わった後の満足で幸せそうな顔は、わたしの心を嫌という程満たす。愛しい、という名の感情で。
胸が苦しくなるのだ、少し左寄りの胸が、痛くなるのだ。手で抑えて、抑えて。でもまだ痛い。
「どうしよう」
「なに」
「隆也がかわいすぎて、胸が苦しい、というより痛い」
そう言ったら顔をしかめた。
「お前さ、つか女子ってさ、なんですぐかわいいっつーの?お前らが思う以上にこっちはうれしくねーから」
「は、他の女子からかわいいって言われてんの?」
「妬いた?」
「妬いた」
素直に言えばにやりとうれしそうに隆也は笑った。迷惑がられるかと思ったけれど、そうでもないみたいだ。
「じゃあさ、ね」
「隆也が好きすぎて胸が苦しいんだけど」
そう言ったら今度は照れて口元を隠した。学校でも、すれ違うとにやけたりするわけじゃあないのに口元を隠す。それに気付いてからは、彼のこの行為を見る度意識されているのだとうれしくなった。
「キスしてえ」
この甘ったるい雰囲気は吐き気がする程だ。しかし嫌いではなくむしろ好き。だってそうでしょう?好きな人に触れて気持ちが高ぶるのは人間の欲望であり、本能。
願わくば、この幸福と満たされる欲望がいつまでも続きますように。
「幸せだね」
言ってみたら、その言葉があまりにもしっくり来るから思わず恥ずかしくなって俯いた。
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『a hope』様
被災者の皆様の傷が
少しでも和らぎますように