「マスター、わたしを破門にしてください」

ラクサスが破門された。雷神衆は残るらしいけれど、ラクサスは出て行くと。そう聞いていても立ってもいられなくなった。マスターにわたしも破門にするようお願いしたらうーんと困った顔をされた。

「そう来ると思ったわい」
「!じゃあ、」
「お前はだめじゃ!!」
「えー!!」

なんで、と言ってもマスターはだめじゃだめじゃと首を振るばかり。そんな、わたしラクサスいなかったらここいる意味ほとんどなくなっちゃうし!

「だってわたし、結局最後までラクサスと一緒にいたんだよ?みんな恨んでるに決まってるし、マスター、ここに来るのだって正面口から入らないでわざわざここの窓から入ったんだよ?絶対に気まずいから。ねえお願いマスター、わたしもここを出たいの。みんなに嫌われながらここにいるくらいだったら破門にされた方が断然マシ」
「ぜーったいにだめじゃ!」
「じゃあ勝手にここ出てく!」
「むうっ…!」

そうだ、別に破門にされなくても勝手に出て行けばいいだけの話。さあラクサスに置いて行かれない内に準備しようと窓を開けるとマスターに引き止められた。「待て待て待て!」、言っておくけれどわたしラクサスについてくからね。

「…一応言わない約束だったんじゃがのう」
「何が?」
「ラクサスがなあ、お前さんは何があっても絶対に破門にするなと、な」
「…へえ」
「あとついて来ようとしたら手足縛ってでも引き止めろ、とも」
「…マスター」

なんじゃ?と首をかしげる彼に笑いかけた。大丈夫、マスター。

「お孫さんのことはわたしに任せてください」

そう言ったらびっくりして、それから呆れたように笑う。「ナマエに任せたらまたとんでもなことになりそうじゃわい」。だから、大丈夫だよマスター、今のラクサスなら大丈夫。





「ラクサス」
「…やっぱりな」

結局わたしは破門されないまま妖精の尻尾の一員の状態でラクサスについていくことに決めた。ファンタジアで賑わう大通りからはずれて暗い静かな方へ歩いていく。「どこ向かうの?」「旅行じゃねーんだぞ」「わかってるよ」。次帰ってくるのはいつになるだろうか、いや、一生帰ってこないかもしれない。

「いいのか?」
「何が?」
「未練はないのか」
「別に、みんなわたしのこと恨んでるだろうし、ずっとここにいたから少し名残惜しいけれど、わたしは帰ろうと思えば帰れるから」
「………」
「…っていうより、本音は、ただラクサスと一緒がいいなあって」

思っただけ、と続く前にラクサスにキスをされた。すぐに離れてしまったが心臓の高鳴りは止まらず、目の前にいる愛した男はにやりと笑った。





「後悔すんなよ」

誰がするもんですか。
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