「えーっと、あたし星霊たちとチアダンスしまーす」

そう言ってポンポンを構えたルーシィ。一体どこからそんなもの出したのだ、とつっこみたくなったが、それよりも何故か元気のない隣にいるナツが気になった。グレイに聞けばどうでもいいから知らないと言うし、ハッピーはにこにこ笑うだけ。エルフマンは男だ!としか言わないので気にするだけ無駄だと気付く。

「つか、お前出ないんだな。コンテスト」
「家賃には困ってないし、わたしの出る幕ないし」
「そうか?けっこういいとこまで行けると思うけどな」

そう言って爽やかに笑ったグレイにどきりとした。いかんいかん、わたしにはラクサスがいるのだ。いや、正式に付き合っているわけではないのだけれど。
そうこうしている内にエバーグリーンが現れる。驚くグレイの横で、予定通りだと胸の中で呟いた。あのド派手な登場は予想外だが。ルーシィが石にされ、その他石にされたエルザたちを見て胸が痛まないわけがなかった。けれど、わたしは今そんなこと許される立場ではない。
逃げる観客たちを尻目に、現れた雷神衆やラクサスにギルドのみんながキレた。まあそりゃ、キレるわな。

「この女たちは人質にいただく」

そう言って石化したルーシィに腕を回すラクサス。どくり、と心臓が嫌な音を立てた。この不快感は知っている。ただ、ラクサスは今雰囲気を出すためにそういうことしているだけ。別にルーシィのことが好きなわけじゃないのだ。そう自分に言い聞かせることでしか涙を抑えることはできなかった。
隣にいるナツが立ち上がる。バトル・オブ・フェアリーテイルに肯定したのだ。ラクサスがナツを見ることで自然とわたしのことも視界に入るはず、とそっと顔を上げれば案の定目が合った。にやりと笑った彼は更にルーシィを自分の方へ引き寄せる、わたしは思わず目を見開いた。



…こいつ、確信犯、だ。



「俺はお前のそういうノリのいいところは嫌いじゃねえ」

ラクサスが相変わらずルーシィを引き寄せながらナツに答える。マスターも珍しく声を荒げていて、それがなんだか新鮮だった。でも、最近よくその怒鳴り声を聞く。事件が絶えない証拠だ、そろそろマスターも倒れちゃうだろう。「ナマエ」、ふと名前を呼ばれる。みんながわたしに注目した。…やば、どうしよう。何にも話聞いてなかった。

「お前が今するべきこと、…わかるな?」

ずるい、ラクサスは。初めて聴いたような優しい声で問われるのだから、ドキドキして返事どころじゃなくなる。

「ナマエ!!」
「っせーなあジジイ、黙ってろ」

マスターに名前を呼ばれ我に返る。立ち上がりラクサスのところへ寄ろうとすれば、その前にグレイに腕を掴まれた。「おい、嘘だろ?」、何が嘘で、何が本当なのかよくわからない。ただわたしはするべきことをするだけだ。

「グレイ、わたしは欲まみれの女だよ。グレイやグレイの魔法みたいに綺麗なんかじゃない」

軽く振り払えばその手はすぐに取れた。舞台の方へ駆け寄りそこをよじ登って、差し出されたフリードの手を取り立ち上がる。「エバ、今日は特別かわいいね」「あらありがと」、照れたように笑った彼女にわたしも微笑めば、どうやらマスターがぷっつん来たようで巨大化してしまった。あっと驚く間もなくラクサスに体を引き寄せられる。瞬間まばゆい光がわたしたちを包み込んだ。





バトル・オブ・フェアリーテイルの始まりである。
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