マルフォイは馬鹿だということはみんな知っていた。だが、ここまで彼が馬鹿だとは思わなかった。呆れを通り越して呆れてしまう、結局わたしは彼に呆れることしか思い浮かばない。心配?まさか、自業自得だもの。

「ドラコ、大丈夫かしら」

ぐすぐすと涙と鼻水を流してマルフォイの失態を間違った同情で嘆いているのは言わずもがなパーキンソンである。彼女だけではない、スリザリンはだいたいが彼を心配していた。
バックビークに失礼な態度を取ったマルフォイは、怪我をした。ハグリッドの話を聞いていなかったのだろうか。わたしはもちろんうまくやりました、けれどポッターのような特別なことはしてもらえなかったなあ、残念。

「ちょっと、あんた!」

キリキリとした声が響くと談話室は静かになった。本から顔を上げると、リズに顎で指図される。「あんたって、あんただよ」。そう聞こえた気がした。

「……ハアイ、パーキンソン」
「この雌豚、ドラコが苦しんでる時によく呑気に本なんか読んでられるわね」

め、雌豚、ですと…。咳払いのあとため息が聞こえた、これはリズが笑いをこらえる時にする行動である。お前、雌豚ってみんなの前で言われてみ?けっこう傷付くから。「なんとか言ったらどうなのよ!」。そう言ってわたしが飲んでいた麦茶(故郷から持参です)をかけられた。バシャッ、読んでいた本も濡れる。

「…パーキンソン、一つ、いい?」
「何よ」
「わたし読んでるの、教科書。マルフォイが授業に出られないかもしれないから、その出られないかもしれない授業の予習中ね。ちゃんと勉強して、あなたのだーいすきなドラコ君に教えようと思ってたの。あなたそういうの考えてた?ただ泣いてたわけじゃないよね?まっさか、ね」
「…っ」
「マルフォイ直々に頼んで来たのよ、わからないは教えてくれって。でもこれじゃあ教えられないかも、なんでか麦茶がわたしと教科書を濡らしちゃったから」

泣いて去ってしまったパーキンソンに少し悪いことしたかな、と思いつつも雌豚のお礼だと制御をかける。リズがお前臭いと言うのも時間の問題だったので慌ててシャワーを浴びに行った。イギリス人ははっきり言うからね、こっちも言ってやんなきゃ。





「お前何したんだ」

二、三日振りにマルフォイと会った。彼は腕に包帯を巻いていて、まあ思ったことはざまあみろだよね。「いつ?」、あえて聞き返してみれば思わず頬が緩み、一方マルフォイは怪訝そうに顔をしかめた。「パーキンソンに謝りながら泣きつかれた」、あら、予想外の展開。てっきりわたしのことを悪く言うのかと思ってた。そう、と軽く流せばあちらもどうでもよさそうだった。

「ところで僕のいない間、しっかり勉強してくれたんだろうな?」
「秀才マルフォイ君に教えられる自信はありませんけど」
「フン、そんなこと思ってないだろ」

けっこう本気だったりする。マルフォイはちゃんと頭いいもの、それが周りの天才のせいで少し埋もれてしまっているだけで。「まあね、ちゃんと教えるよ、マルフォイ君」。そういう事実が癪だから隠すけれどね。

「………お、おい、お前、マルフォイって、言いにくいだろう」
「いや別に」
「ど、ドラコって呼んでもいいぞ」
「いや別に」

そういえばリズはどうしたかな、最近彼氏できたらしいからそっち行ってるかもなあ。きっとわたしの単独行動増える、彼氏さんスリザリンで取ってる授業同じらしいし。


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