あれからマルフォイとは会わない。会わないだけでさすがに見かけるし、目だって合うし(睨まれる)、あとスリザリンのほとんどから嫌われた。“グリフィンドールを助けた裏切り者”だって。ウケルー、ぷぷ。本当は胸が痛いし泣き叫びたいし土下座して謝って友達くださいって言いたいけれど、リズがいるから安心だ。わざと肩にぶつかる奴がいればすぐにリズが馬鹿にした。「あんた知ってる?今嫌われてるよ」。わたしを。このドSっぷりはなんなんだ。そして少し嫌じゃないわたしもいる。

「あ」

と言って口を手で覆う。その声に相手は気付いてこちらを向いた。

「……何をしている」
「いや、何も、通りすがり」

睨みを利かせるのは噂のマルフォイであった。珍しく一人で、何かいつもと違う服装。ああ、これは。

「クィディッチ?」
「………」
「出るの?」
「ああ、シーカーだ」
「へえ、」

すごいね。
言ってみても無反応、今日はなんだか大人しかった。いつもの彼なら自慢してくるだろう。ミョウジ!僕はシーカーに選ばれたんだ!さすが僕!素直に褒めたっていいんだぜ!こんな感じで。しかし今日はなんだか違う、よく見れば服は少し汚れていた。

「練習、疲れたの?」
「消えろ」
「金魚のフンは?」
「………あいつらは知らない」

内心、金魚のフンで通じたことがおもしろかった。

「はい」
「…なんだよ、これ」
「見てわかるでしょ!チョコだよ、マグルのだけど。疲れた時には甘いもの。しかもマグルのだから逃げないし変な味もしないし、安心して食べていいよ」

受け取らないと思っていた。彼にとっては忌々しいマグルのチョコを忌々しい女から受け取るんだもの。しかし今日の彼は本当に予測不可能。
わたしの手のひらに乗せられたチョコを、自ら取ったのだ。

「、え」
「…なんだ、冗談ならちゃんと言え」
「いや、冗談じゃない、あげる」
「受け取ってやる」

練習で疲れてしまったらしいマルフォイは、どうにも変で、わたしはそそくさと逃げた。と、その前に一言。



「この前はごめんねマルフォイ、言葉が悪かったね。マルフォイにはマルフォイなりの生き方があるし、わたしには口出す権利なんかなかったわ」

正直な気持ちだった。けれどやはり言い方が悪いのか、睨みつけてくる。ああ、これは下手に出なければならない状況だ。

「…マルフォイと友達になりたいな、わたし、なんだかんだで成績いいしこうやってシーカーに選ばれるマルフォイ、かっこいいと思うよ。それはつまり才能があるってことなんだから」

そう、例えクィディッチの才能で選ばれたわけじゃなくても、彼は選ばれるほどの何かの才能があるのだ。その何かはわからないけれど、うん、いいことだと思う。少なくとも彼はいじめっ子である以外すべてわたしより優れていると思った。

「…当たり前だ、むしろ才能に満ち溢れていて困っているくらいだ。お前に少し分けてやろうか?ああ、君に分けても宝の持ち腐れだな。やはり僕じゃないと」

その減らず口糸で縫いつけてやろうか。


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