「いいかしら、ミョウジさん」

呼び出しにやって来たのは一人だけだった。かわいらしく微笑み、端から見れば普通のお友達に見えるだろう。さすがに明らかに呼び出しです、だなんてするほど馬鹿ではなかったらしい。もちろんです、とその人について行こうとすれば楽しそうに笑うブレーズと顔をしかめたドラコが見えた。それに知らない振りをして、リズに声をかける。

「ちょっと行ってくるね」
「そう、迷惑かけんじゃないわよ」
「わかってるってば」

ここで引き止めないんだものなあ、リズは。でもその方が助かる。「ナマエは魔法以外のことでは幼稚だから心配なのよ」。くすりと笑うリズにわたしも微笑み返した。





嘆きのマートルがいる女子トイレ、の前に彼女たちはいた。7、8人か。やはり主犯格はブレーズの元パートナーで、ちらほらドラコの追っかけもいる。パーキンソンはいなかったのが意外である。わたしが近付くと、元パートナーの先輩は冷たい顔をしながら口を開いた。

「ねえ、わたしが言いたいこと、わかるわよね?」
「ザビニ君のことですか?そのことは、悪いことをしたと思ってます」
「…なけなしの色気を使って誘惑したのね、最低よ」

この場面だけ見れば、わたしが悪者なのだろう。確かにわたしが悪い、彼女からブレーズを取ったのだから。すみません、と頭を下げればがつっと頭を殴られた。パーでよかった、グーだったら笑い事じゃ済まされない。「本っ当、ブレーズも何故こんなブス選んだのかしら!」。見れば顔が真っ赤で、タコのようだと思う。しかし顔は本気だったので何も言えなかった。

「ドラコの次はザビニ?ふざけないで!」
「っいだ、」

今度はドラコのファンだろう、ドラコの周りにいたのを見たことがある。そのお綺麗な足で体を蹴られた。言ってしまえばこれらの暴力行為は簡単だが、実際はとっても痛い、頭を殴られた時点で痛いのが苦手なわたしは涙を流している。

「ふふ、見て、泣いてるわよ」
「わたしたちはもっと辛い思いしたんですもの、これくらい当然だわ」

がつりともう一度蹴られる。そんなこと言われてしまえば、わたしの中の良心が表に顔を出してしまう。わたしには当然の報いなのだ、と。


しかしやはりわたしはスリザリンなのだろう。





「レラシオ」





素早く杖を構え呪文を唱えれば彼女たちははじけ飛んだ。キャアアア!と甲高い声が響く。慌てて杖を構えようとした人には「エクスペリアームス」、杖を飛ばした。……1、2、3、4本は飛んだな。攻撃されてからすぐ杖を構える速度はよかったけれど、わたしには敵わない。

「知ってますか?わたし、闇の魔術に対する防衛術、自慢じゃないけど学年で一、二を争えるんですよ」

ハリーもまだケツが青い、女の子相手にはさすがにとまどっていたから勝てた。次はないかもしれないな、と頭のはじっこで考える。

「呪文も、スネイプ先生に特別レッスン受けちゃって。ていうか先生が唱えてるの聞いて、独学なんですけどね」
「てか、お嬢さんたちなら知ってるでしょ?わたしの成績の良さ」

杖を同じ学年の子たちに向けながらそう言えば、目を見開いて縮こまっていた。わたしがんばってるの、知らないのかな?けっこう点数稼いでるつもりだったのだけれど。「確かにブレーズのことはすいません、取っちゃって。でもそれ以外は知りませんよ、わたしの実力というかなんというか」。こっそり杖を構えようとしていた人のそれも飛ばす。未だに立ち上がらないのは、実戦に不慣れで腰が抜けているからだろう。

「楽しいじゃないですか、こうやって戦うの。かっこよくて」
「や、やだ…!」

「インペディメンタ、インカーセラス、オパグノ」

動きを止め、ロープで縛り、オパグノによって現れたコウモリが彼女らに小さな危害を加える。そんなたいそうな攻撃はしていないのになあ、とキャアキャア騒ぐ彼女たちを見ていれば思う。何人かが大声で泣き始めた時、オパグノを解き失神呪文をかけて黙らせた。「ステューピファイ」。その言葉を口にした瞬間ころっと黙ったのを見届け、もう一度インカーセラスで手足を縛る。…そうだな、ご飯の時間になったら解こう。その頃ならステューピファイも解けているはず。

「アンタ、なかなかやるわね」

トイレから嘆きのマートルがこちらを覗き見ていた。曖昧に笑い、そんなことないよと返す。マートルにうまく褒め言葉を言い、リズが待っているであろう談話室に向かった。


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