三大魔法学校対抗試合に伴い、クリスマスのダンスパーティが開かれるそうだ。パートナーを見つけ踊らなければならないのかと思うと非常に億劫だが、そうも言ってられない。ヘタレなドラコと肉食系女子パーキンソンのことだ、ドラコがわたしを誘う前にパーキンソンが彼を誘うだろう。わたしの予想通り、パーキンソンはドラコと腕を組みながら食事の場にいた。周りから視線を集めている。

「ぷくく」
「笑ってる場合じゃないわよ、アンタパートナーどうすんの」
「え?ああ、どうせ踊れないし、いらないかなって」
「…浮くわよ」
「ロン辺り誘おっかな、いや、ロンはハーマイオニーか」
「発音できるようになったの?」
「まあね」

さて、どうしようか。一応ロンに声をかけて、それでも駄目だったらハリーに声をかけてみよう。わざわざドラコが嫌いな男の子を選ぶ辺り、わたしもなんだかんだでパーキンソンのことが気に食わないらしい。

「ザビニにしたら?」
「えー、ザビニ、美人しか好きじゃないじゃん。リズは美人だからいいかもしれないけれど、わたし話したことすらないし」
「…どうかしらね。ザビニ!」

リズの行動にびっくりする。にやにやと下心ありまくりな笑顔でやって来たザビニに、リズは普通に話しかけていた。やっぱり、リズはすごいなあ。ザビニ、わたしなんて眼中にないだろうに。

「ねえ、この子パートナーにしてあげてよ。ナマエは許容範囲内だって言ってたじゃない」
「へえ、いいの?」
「生憎目を光らせてた誰かさんは他の女に捕まったみたいだし」
「なるほどね」

リズがザビニに席を譲り、彼はそこに座った。リズはどこかへ、無論彼氏のところだろう。意外にもぽんぽん進んだ話にわたしはたじろいだが、思いきって声をかけてみる。

「ザビニ、」
「パートナーだろ?名前でいいぜ、知ってるか?」
「…ブレーズ」
「お、当たり」

嬉しそうな顔をする、ブレーズに少し緊張が和らいだ。

「ね。ブレーズ、わたしでいいの?ブレーズならもっといい女の子いたでしょ?」
「いたさ。けど、ベルウィンとナマエの頼みなら」
「そこ!…わたし、ブレーズと話したことないじゃん」
「当たり前だろ?ドラコが見張ってたからな」

「さっきも言った通り、お前は許容範囲内」。そう言ってわたしの頬にキスして来た。軽い彼の行動にドキリとするが、誰にでもしていると知っているのでため息しか出てこない。「…わたし、踊れない。てか踊りたくない、ダンスなんて知らないし」「正しい選択だ」「は?」。ブレーズはパートナーを了解しておいてわたしの言葉に肯定の意を示した。くいっと、彼は顎でどこかを指す。

「俺の、“元”パートナー。すっげー睨んでる。美人だけど面倒な奴なんだよな」
「…あとでちゃんと断ってよ」
「あと俺を睨んでくる男、一名。んで、その男の隣でお前を睨んでる女、一名」
「…想像つくわ、ファザコンとパグでしょ」
「くくっ、ご名答。…どうする?」

「ムカつくから、踊ろうよ」

にやりと笑えば、彼もにやりと笑ってわたしの前髪をかき上げ額にキスをした。「仕方ねえな、踊ってやるよ」。ドラコとブレーズのファンは敵に回しただろうなあ。





ブレーズとパートナーになった翌日、リズを外に待たせトイレに入り用を足している最中上から水が降って来た。忌まわしいクスクスという笑い声が聞こえ、更に水が降って来る。呆気にとられている間に彼女たちはどこかへ立ち去ったらしく、わたしの名前を呼ぶリズの声が聞こえた。

「気分は?」
「………最悪」
「ナメクジじゃないだけマシよ」

個室の戸を開けると、さすがに困った表情のリズがいた。珍しく笑ってはいない。

「ザビニ、紹介しない方よかったかしら?彼とマルフォイのファンが手組んでた」
「リズに被害及ばないなら、それで」
「あたしに来るわけがないじゃない。そんなことしたら、親の権力でその家潰すわよ」
「そりゃそうだわ。…ま、ナメクジじゃないだけマシかなあ」

ふう、とため息をついてネクタイを緩めた。まったく、ダームストラングとボーバトンの人たちが見たらどう思うのか考えないのだろうか。いや、見えないようにこうしたのだろう。「今から防水呪文しても、」「遅いわよ」。常に防水していないとなあ。


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