勝己君とママたち


「走ってきたの?」
「ッス。」
「すごいねー!ヒーロー志望だもんね。」



ガ チャン



「…うちの子と最近喧嘩した?」
「…別にしてねえ、です。」
「そう…感じ悪くてごめんね。…今日三者面談だったんだけど、勝己君は終わった?」
「来週に。」
「そっか!…実は今日初めて、あの子の志望校知ったんだけどね。第一志望T高だったの。」
「…。」
「あっ別にT高が悪いってわけじゃないんだけどね、うちから近いし、ここら辺じゃ一番頭いいし。私も安心なんだけど。」
「…。」
「模試の結果先生に見せてもらったんだけど、志望校の判定のところに雄英って書いてたのよ。勝己君も雄英でしょう?うちの子ヒーローになりたかったのかって一瞬びっくりしたのよ。」
「…。」
「でも普通科しか書いてなかったし、他に書いてたのもそれこそT高の普通科とかだったから、ヒーロー目指してるわけじゃないんだろうけど。」
「…。」
「うちの子、滅多にわがまま言わなくて。小さい頃から気付いたら泣かないし、物分かりいいし、私教えたことないのに家事もできるし。あっそういえば勝己君と初めて会った日、あの子泣いたわね。フフ。」
「…。」
「正直T高はなんとなくわかっていたのよ。けど、模試に書いてた雄英が気になって…しかもA判定だし…。なんだか、T高が第一志望っていうのが、腑に落ちなくなって。先生に聞いたら雄英は毎回書いてるらしいし。だから先生は逆に雄英を目指してると思ってたらしいのよ。」
「…。」
「私、あの子を育てなきゃーって仕事ばっかりして、何にもわかってなかったんだって気付いて。だからこれからは好きなことさせてあげようって、高校も好きなところ行かせてあげたいんだけど、」
「…。」
「雄英なんかいいって言うのよ!多分、あの子昔からお金のこと気にしてくれてるし、今回もお金のことかなって思ったけど違うって言うし…。」
「…。」
「家事もいつもしてくれてるから、多分高校入っても続けてくれるつもりなのかしらね。でもその顔が明らかに作り笑いだから、絶対他に何か理由があると思って!」
「…。」
「てっきり勝己君と喧嘩して、勝己君雄英でしょう?顔合わせづらくなったのかと思ったの。でも…違うのよね。でも…なんだか様子がおかしいのよ。」
「…おかしい?」
「最近ね。ぱったり勝己君の話も家でしなくなったし、さっきみたいに避ける?ようになったし。だから、…あの子勝己君のこと、大好きでしょ?もしかして…、」
「………。」
「………。」
「(……アイツこないだのヘドロので俺を、)」

「うちの子フっちゃった?」
「フッ??!!!!!てねえわ!!」

「えっじゃあ付き合ってるの?!」
「なんでそーなンだよ!!!」

ガチャン
「ちょっと勝己あんた何怒ってんの!!」

「ゲッ…」
「あらー光己ちゃん。」
「ごめんねうちの馬鹿がうるさくて。」
「ううん、なんか、私の勘違いだったみたい。」
「勘違い?」
「そう。うちの子が最近全然勝己君の話しないしさっきもさっさと家入っちゃうし、なんだか元気なくて、てっきり勝己君にフラれちゃったのかと。」
「え!!」
「そんなんじゃねえつってんだろ!!」
「じゃあ、えーーあんた何かしたんじゃないでしょうね?」
「してねーわ!!俺は帰るぞ!!」

「ちょっと待ちなさい。」
「ガッ…!クソババア何すんだゴルァ!!」
「あんたちょっと様子見てきなさいよ。」
「なんで俺が!!」
「そうよ!いいわよ、気にしないで…。」
「あんた小さい頃から名前ちゃんにお世話になってるでしょ!役に立つチャンスじゃない。」
「ンだとコラ…!!誰が誰の世話になってるって…?!」
「うちの子よーお世話になってるのは!二人でちゃんと話してみるから、大丈夫よ。」
「子供同士じゃないと話せないこともあるわよ!ちょっと試してみましょ、多分無理だろうけど。」
「ハア?!?!無理じゃねーわ!!」
「どうかしら。お子ちゃまのアンタなんかに大人な名前ちゃんの思ってること引き出せるわけないでしょ。」
「ミジンコほども残さずに本音引きずり出したるわ!!!!」

「よし、言ったわね。いってらっしゃい。」
「………チッ。」
「ごめんねー…お言葉に甘えちゃうね。」
「いーよいーよ気にしないで!あんなのでよければドンドン使ってって!」
「(クソババア…。)」



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