認めたくはないが、総悟の俺に対する嫌がらせは最近マジで、殺されると少しだけ本当に思ってしまった、少しだけ。俺はこんなもんじゃ死なねえ。副長も譲らねえ。
 そう、日常化してしまっていたのだ、総悟がバズーカを俺に向けることなど。実際撃って来ることなど。そして俺はいつもの通りそれを回避する。今までその行動によって何かに影響があることはあまりなかった(ニュースになることは置いといて)。
 だからそのバズーカが一般市民に思い切り当たった時、一瞬何が起こったのかよくわからなかった。

「骨折と、飛ばされた拍子にガラスで切っていたため何針か縫いました。命には別条はありません」

 医者の言葉にさすがの総悟も焦った顔をしていた。ソイツは女だったらしい。女に跡が残るような怪我をさせたということも、俺達が気に病む一つの理由だった。

「あ、どうも、すいませんわたしの不注意で」

 ソイツは笑っていた。頭を下げると慌てていた。「他の人が明らかに逃げていたのに気付かなかったのはわたしなんで。大丈夫ですよ、多分出産の時の方が痛いです」「はは、そいつは違ェねェ」。調子に乗った総悟の頭を殴る。ソイツは笑っていた。今思えば、総悟は俺達があんまり悩んだような顔しても、その女も困るだけだって気付いていたのだろう。






「前にもこんなことありましたね」

 “ソイツ”はまた笑っていた。本当に楽しんでいるような顔だったので、少し腹が立ってわざとらしくため息をつく。

「それが確か初めて会った時ですよね、めっちゃ怖い人来たーって思った」
「お前、もう少し怒ってもいいんだぞ」
「怒りませんよ、痛いけど、土方さんが怪我してないならいいんじゃないですか?」

 大切な恋人が怪我するくらいならばいっそのこと避けないで当たるべきだった、と後悔する。前回と違い掠り傷と脳震盪だけで済んだことが何よりもの救い。

「沖田さんどうしてますか?」
「近藤さんのとこにいる」
「怒られてるのかな?もう二回目だし別にいいのになあ」
「おい」
「二度あることは三度あるって言うし」
「名前」
「あともう一回起こったらおもしろいですよね」

 黙らねえ口にイラついてキスをすると、やはり彼女は楽しそうに笑っていた。「あんまりカッカしてると損しますよ」。俺がどれだけ心配したのか知っているのだろうか。いや、知っているのだろう。だからこそこうやって元気な姿を見せているんだ。

「じゃ、沖田さんには罰として何か買ってきてもらおう」

 怒ったっていいのに。そうすれば総悟だっていくらか反省するだろう。もしかしたら俺を狙うのをやめるかもしれない。「上司と部下の大事なスキンシップじゃないの?」。でも、以前名前がそう言っていたのを俺も総悟も知っているからやめる可能性は低い。どうしたものか。

「土方さん、よかったじゃないですか。前も今回も、わたし以外の人だったらキレまくって真選組はもう終わりですよ」

 相変わらずにやにやと楽しそうに笑うものだから、とりあえずもう怒る気は失せてしまった。

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