私がフィンクスに恨みを持った人に襲われてから、誰かしらが私と一緒にいるようになった。誰かしらと言ってもフィンクス、マチ、パクノダ、そしてシャルさん。あのマンションは引き払い、もっと立派ないろいろな意味で高いセキュリティーのしっかりしているところに住むことになった。フィンクスに恨みを持っている人にセキュリティーが通用するのか疑問である。
 今日はフィンクスと、暇だと言うマチ、そしてなんと団長のクロロさんがやって来た。クロロさんは初めて見た時と違い、髪を下ろしてスーツ、額には包帯を巻いていた。耳の大きなピアスが印象的である。何故こうも、フィンクスのお仲間さんたちは美男美女ばかりなのか…。

「すごいな」

 普段から会っているフィンクス、マチとは違いまだお腹がペタンコの時以来だからかまじまじと見られる。産まれるまであと二ヶ月ほどだと伝えると綺麗に微笑んでくれた。う、美しい。
 改めてフィンクスを見ると一重だし眉間に皺が寄ってるし真顔は不機嫌な顔だし、まあ整ってるっちゃあ整ってるけど普通にただのヤンキーだもんな…。顔を見比べたのがバレたらしくぶっ飛ばすぞと怒られた。

「性別は?」
「産まれてからのお楽しみにしてます」
「へえ、名前は?」
「あー、名前は、まだ…」
「団長がつけてもいいぜ」
「確かに、私とフィンクスよりはセンス良さそう」
「ハハッ。一応考えておくよ」

 会話を聞いているマチも、笑いながらコーヒーを飲む。先日殺されかけたとは思えないほど幸せだと感じた。
 あの時は本当に悩んだ。シャルさんに以前言われたように自分のことしか考えていないことをやっと自覚し、私とフィンクスが産むと決めても産まれた子は幸せになれるのか、その手助けをロクでもない私たちができるのかずっと考えていた。フィンクスは子供が産まれるからと言って盗賊をやめない。あくまで認知し協力はするけれどそちらが優先されることは私も理解していた。…つもりだった。
 死にそうになってようやく彼をわかった気がする。むしろまだわかっていないところはたくさんある。目的のためならば人を簡単に殺せる彼が子を持つと言うのはいけないことで、私もそれに加担している罪人なのかもしれない。
 産んだらどうなるか、結論はまだ出ない。けれど、やはり私はフィンクスとの間にできたこの子を産みたくて、フィンクスもそれを望んでくれて、周りの人も助けてくれる。産む理由はそれだけで十分だと、今のところはそう判断した。

「フィンクスは男と女どっちがいい?」
「あぁ?どっちでも」
「男ならフィンクスみたいに強くなるのかなあ。うっかり殺さないでね?」
「弱かったらぶっ飛ばす」
「女の子だったら、いくらフィンクスでも溺愛するのかな」

 お腹を撫でるとぐねっと動いた。いつもより賑やかなことに気付いているのか、今日はよく動く。

「フィンクス似の女の子だったらかわいそう」
「どういう意味だよコラ」

 フィンクスがこめかみをピクリと動かすが、言った本人のマチはさあねと煽る。フィンクス似でもかわいい我が子には変わりないが、せめて眉毛が生えていることを願うばかり。

「産まれたらフェイタンに持たせてみてえ」
「恐ろしくギャップがあるな」
「ていうかその子、死ぬんじゃない?」
「だよなあ」

 隣で繰り広げられるあまりよろしくない会話。これが比喩でないから笑えないのである。とりあえずそのフェイタンさんには注意しておこう。





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