妊娠も四ヶ月を迎え、大分つわりも落ち着いた。けれどお医者さんは、まだ安定期に入っておらず流産の可能性も十分在り得るから油断するなとのこと。胎児とは繊細な生き物である。
 パクノダとマチは初めてご飯を作りに来てくれてからも何度も様子を見に来てくれて、恐らく行けと言われたのであろうフィンクスも手土産を持ったり持たなかったりしながら会いに来てくれた。最早驚きはしなくなったけれど少しおかしく感じる。

「や。体の具合はどう?」

 私がまったく関わったことのないフィンクスのお仲間さんが突然訪れたのは、そんな時だった。その顔はフィンクスと二人で団長さんに産むと伝えた時に見ていた。「窓の鍵が開いてるのってみんなが来るから?不用心だなあ」。まさにその通りで、フィンクスやパクノダ、マチがいつ来ても入れるように窓の鍵は開けていた。まさか彼ら以外で彼らのような超人的存在が私に会いに来るとは考えていなかったのだ。
 名前も知らない彼は壁にもたれかかりながら腕を組み、私は読んでいたマタニティ雑誌を横に置いた。

「ねえ、一つくらい答えてよ」
「……体は大丈夫です。窓も、フィンクスたちのために開けてます」
「ふーん。いくら三階とはいえ、所詮三階なんだから気をつけた方がいいよ。フィンクスのこと殺したい奴なんて腐るほどいるんだから、自分の立場考え直したら?」

 心配しているセリフの割には刺々しさのある言い方。笑った顔が余計それを際立たせている。

「ねえ、なんで産むの?」

 純粋に、この人は質問ばかりだな、と思った。「産みたいと思ったからです」。妊娠というものに興味が湧いてやって来たのだろうか。

「へえ、じゃあ、君は自分のことしか考えてないんだね」
「…!」
「フィンクスは協力的みたいだけど、いつ飽きるかわからないよ。面倒くさくなったら女子供関係なく捨てるだろうし、場合によっちゃ殺すだろうね。だいたい好きでもない男とヤって、その子供を産むってどういう神経してるんだろうね。金銭的にもフィンクスがいなかったら相当苦労するんじゃない?仮にアイツがいたとしても恋人ですらない君たちが両親って、産まれて来た子はどんな気持ちなんだろうね。あと、」
「………」

「フィンクスは君とは違って簡単に人を殺せる。殺人鬼だよ。その子、ロクな育ち方しないんじゃない、きっと」

 何故初見でこんなボロクソ言われなきゃならないんだこの野郎。





/運命論を咀嚼する
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