「あっ!おはようみょうじさん。朝から君に会えるなんて、ラッキーだなぁ〜」
…ウザい。
何で朝からこいつと会わなきゃいけないのよ…!
「それでねー…みょうじさん?ありゃ、無視だ。」
何か言ってる様子の千石を無視してスタスタ歩き出す。
千石を抜かすと後ろから
「そんな恐い顔すると、可愛い顔が台無しだよー!」
と叫ばれた。
ああ、もう本当にやめてほしいっ!
私は千石が嫌いだ。
入学したばかりの時は、初対面にもかかわらず仲良くしてくれて、良い人だなぁと思っていたけど、単にそれが女の子をナンパしてるだけだと分かると、無性にイライラしてきて、気付けば私は彼が嫌いになってた。
昼休み、お弁当を食べて友達とくだらない話で笑い合っていると
「みょうじさんってそんな顔で笑うんだー」
と言う私の嫌いな声が聞こえてきた。
声のする方を見ると、いつの間にかクラスに入ってきといた千石がいた。
「…ここあんたのクラスじゃないけど。」
「知ってるよ?でも、みょうじさんの笑い声が聞こえたから来ちゃった!」
来ちゃった!、じゃないし!!
何で千石は私なんかに話しかけるの?
他にあんたに構って欲しい人はいっぱいいるのに。
どうしてあんたの事が嫌いな私に…。
「…みょうじさん?どうしたの?そんなに難しい顔して。」
「なんでもないよ!」
「俺、みょうじさんの笑った顔好きだから笑っててほしいなー、なんて!じゃあまたね!」
…やっと行ったよ。
何しに来たんだか分かんないし。
「それにしても珍しくない?千石くんが"好き"なんて言うの。」
と、一緒にいた友達が言った。
すると、すかさずもう1人の友達が
「千石くん、本命にしか"好き"って言わない噂、聞いた事ある!!」
と言った。
「まーさかー。千石は誰にでも好きって言ってるよ、そんなのウソだって。」
「いや、そんな事ないよ。」
私が思いっきり千石を否定していると南くんが話に入ってきた。
…そういえば同じクラスだったっけ。
「みょうじさん。少しは千石を信じてくれないか?あいつ、あれで結構繊細なんだ。いっつも言ってるよ、"今日もみょうじさんに無視されちゃったー"って。」
「そんな事言われても…!」
「おっと、もう時間だ。じゃあよろしくね。」
そう言うと南くんはそそくさと去って行った。
千石が私を…?
今まで考えた事なかった。
南くんに言われちゃったし、とりあえず明日から"おはよう"くらいは返してやってもいいかな。
私は嫌い、俺は好き