放課後、授業を終えて部活に行くと、俺の彼女のなまえがマネージャーの仕事そっちのけでせっせと何か作っていた。
「あ、蓮二くん。早いね。」
「ああ、今日は掃除がなかったからな」
「そっか。」
「うむ。…ところでなまえはさっきから何を作っているんだ?」
「あ、これ?"乾汁"だよ。乾くんに特別にレシピ教えてもらっちゃった!」
「…いつの間に仲良くなったんだ?」
「この前東京に買い物に行ったら菊ちゃん達に会って、紹介してもらったの。」
菊ちゃんとはなまえの幼なじみの菊丸だ。
それにしても貞治、俺の彼女と仲良くなろうだなんて…。
次に会った時は完膚無きまでに叩き潰してやろう。
「蓮二くん、どうしたの?」
「ん?ああ、何でもない。」
「そう。よし、最後にこれを入れて…っと。完成ー!」
どうやら乾汁が出来上がったようだ。
色は、青…赤…いや緑…。
何とも言えないもので、とても人の飲む物には見えない。
俺が乾汁を見ていると
「これね、美容にいいんだって」
と言った。
するとなまえはよし、と決心してコップを口元まで運ぶ。
俺はその手を掴み止める。
「何すんの?」
「飲まなくても良いだろう。」
「何で?だってこれ美容に…」
「そんなもの飲まなくても、お前は綺麗だ。」
「へっ?」
あまり俺がこういう事を言わないせいか、なまえは驚いて間抜けな声を出してしまったようだしまったようだ。
「最近なまえは美容のため、綺麗になるためと色々やっているが、そんな事する前から俺は綺麗だと思っていた。」
「蓮二くん…」
「それに、これ以上なまえに綺麗になられたら…俺は目のやり場に困ってしまう。」
そう言うとなまえは俯いて何も言わなくなってしまった。
耳まで赤くなって、照れているのだろう。
俺はなまえの手から乾汁を取り上げ机に置き、強く抱きしめた。
(この後、部室に来た赤也が置きっぱなしの乾汁を飲んで失神する事件が起きた。が、その日以来赤也の肌はとてもきれいだと言う。)
貞治の汁